いよいよ年の瀬です。
一年を締めくくり、良い新年をお迎えください。

■一年という時間は、長くもあり、短くもあり、頃合いの時間
です。大きな何かを成し遂げるには短過ぎます。一方、真剣に
取り組めば、相当のことが出来る時間です。ひとつのステージ
に目途を付けるのに頃合いの長さです。

○年初に何かを決めたとしましょう。一生懸命に取り組めば、
年末には何か手応えを実感できるはずです。
○さらに、翌年には次のステージを目指してスタートします。
年末には、確かな実感を感じ取れるでしょう。
○そして、三年目には、成果の断片を手中にできるでしょう。
○これを十年続けることが出来たなら、大きな功績を残せるは
ずです。
一事業十年の計で取り組んでください。

■一ヶ月という時間は、長くもあり、短くもあり、頃合いの時
間です。大きな何かを成し遂げることはできませんが、仮説と
検証をワンサイクル以上回せる時間です。仮説をランクアップ
させるのに頃合いの長さです。

○月初めに立てた仮説を実行に移して、月末には結果を検証し
ます。
○仮説と検証のワンサイクル(デミングサークル)を一巡でき
ます。
○これを十二回回せる期間が一年です。一年という時間は、相
当な時間です。

■一年を総括してみましょう。

○まず総括が重要です。
・今年一年の軌跡を振り返りましょう。どんな風に考えて、ど
んな風に行動し、その結果どうなったのかを丁寧に整理して
ください。
・良かった点、改善すべき点を洗い出し、来年の指針にしまし
ょう。
○総括が十分でなければ、同じ過ちを繰り返します。
・人は間違えます。しかし、間違えから学ぶことが出来れば、
それは成功の糧になります。一方、間違えを総括できなけれ
ば、間違えを繰り返します。
・間違えを、確実に「糧」にしましょう。
○年初に立てた今年一年の目標を思い出してください。
・そもそも明確な目標を持っていなければ、来年は、明確な目
標を持ってみませんか。目標を置けば、その目標がより明確
であればあるほど、実現の可能性は高くなります。目標作り
から始めてください。
・年初目標の達成率が低ければ、そもそも目標が明確であった
かどうかを検証してください。来年の目標は、より明確に描
いてください。また、目標の進捗確認が出来ていましたか。
年初の目標は、出来れば一ヶ月毎、最低でも三ヶ月毎の進捗
確認と修正が必要です。
・目標の達成率が高ければ、来年は、もっと大きな、届きそう
もない目標を立ててみませんか。自分を過小評価せず、自分
の潜在能力を引き出すぐらいの目標を立案してください。

■いずれにしても、前向きに考えましょう。

〇今年あった良くないことに焦点を当てて悔やむのを止めまし
ょう。どうせなら、今年あった良いことだけを取り出して喜
びましょう。
〇むかついた相手のことを思い出して恨むのはよしましょう。
どうせなら、良くしてくれた人を思い出して感謝しましょう。
〇うまく行かなかったビジネスシーンを嘆くのもやめましょう。
どうせなら、成功した体験を記憶から取り出しましょう。
〇人は考え方次第でその人生が変わります。
恨み・憎しみ・後悔・嘆き…このようなネガティブな言葉は、
除夜の鐘と共に記憶から消し去りましょう。
愛・感謝・喜び・笑顔…来年からはポジティブな言葉とだけ付
き合っていきましょう。

◆来年はもっと積極的に生きましょう。
◆来年はもっと明るく笑顔で生きましょう。
◆来年はもっと感謝して生きましょう。
◆来年はもっとビジネスを成功させましょう。
◆そして、来年はもっともっと幸せになりましょう。
◆こんなことを自身が考え、そして、こんなことを考えている
人達とお付き合いしましょう。

こんな決意と共に新しい年を迎えてください。
一年間お世話になりました。感謝・合掌。

殆どの経営者様が、会社の借入に対して個人で連帯保証をして
います。連帯保証人は、会社が返済できなくなった時、個人の
資産を処分してでも返済をしなくてはなりません。また、保証
債務は、相続により相続人に引き継がれますので、奥様やご子
息にも負担がかかる可能性があります。大変重たい制度です。

このような重たい連帯保証制度が、中小企業の思い切ったチャ
レンジや円滑な事業承継を阻害しているとして、2014年に「経
営者保証に関するガイドライン」がまとめられました。経営者
保証に依らない融資に取り組もうという内容です。

日本政策金融公庫は、ガイドラインに沿って、早い段階から経
営者の保証を取らない融資に積極的に取り組み始めましたが、
信用保証協会と民間の金融機関は消極的というイメージでした。
しかし、ここ最近、信用保証協会も、ようやく経営者保証を取
らない保証制度に取り組むようになったと感じます。

経営者保証を取らない信用保証協会の制度を利用するには、次
の要件を満たす必要があります。

1.法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
2.法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な
範囲を超えていない。
3.法人から適時適切に財務情報が提供されており、本制度に
よる保証付融資を実行後も提供すること。
4.法人のみの資産・収益力で借入返済が可能であると判断し
得るものとして、次の「無担保無保証要件」または「有担
保無保証人要件」のいずれかに該当すること。

■ 無担保無保証人要件
以下の1を充足し、かつ2または3のいずれか1項目を充足す
ること。
1.自己資本比率が20%以上
2.使用総資本事業利益率が10%以上
3.インタレスト・カバレッジ・レーシオが2.0倍以上

■ 有担保無保証人要件
以下の1および2をともに充足すること。
1.上記の無担保無保証人要件1~3のいずれか1項目を充足
すること。
2.法人及び経営者本人等が所有する不動産担保等にて保全の
充足が図られていること。

要件は、財務管理体制を問うものばかりです。個人保証は大変
重たい制度です。個人保証を外すために、財務管理体制の見直
しをしてはいかがでしょうか。ご相談ください。

同じ努力を続けても、その成果の大小は、その選択する事業、
ビジネスモデルや事業立地によって大きく変わります。努力が
よりたくさんの成果を生み出せるような事業を選択してくださ
い。(中小零細企業にとっての)良い事業について検証してみ
ます。

1.社長(会社)が得意で好きな事業を狙う。

社長が不得手な事業や好きでない事業に手を出すべきではあり
ません。IT音痴な社長が、高度なITリテラシーを求められ
る事業を行うべきではありません。また、ラーメンが嫌いな社
長が、ラーメン屋さんを開業してもうまくいきません。

◎得意なこと、好きなことを事業にする、これは最初に確認す
べきことでしょう。

2.(できるだけ小さい)マーケットサイズの市場を狙う。

BIGマーケットへの参入は、中小零細企業が行うことではあ
りません。今想定しているマーケットが大き過ぎるなら、対象
とするマーケットを敢えて絞り込んでください。
BIGマーケットは、多くのBIGカンパニーが、その資本力
とブランド力を駆使して戦う厳しい戦場(レッドオーシャン)
です。中小零細企業が入り込める市場ではありません。

◎狙うマーケットサイズの大きさが適切か、これも確認してく
ださい。

3.多大な資金を必要としない事業を狙う。

自身で調達できる資金内(自己資金+可能な借入れ)で、一旦
事業が立ちあげられる事業を選択してください。力不相応な資
金計画を立てて、資金さえあれば…このないものネダリは止め
ましょう。ステージを一つずつ超えて行きましょう。
また、事業拡大時に多大な事業資金を必要とする事業、金融事
業・投資事業や粗利益率の低い事業は、中小零細企業が取組む
事業ではありません。

◎必要な資金総額が力相応か、これも確認してください。

4.付加価値の高い(高価格帯)事業を狙う。

大雑把に分類すると、低価格帯ゾーンのBIGマーケット(ロ
アマス)はBIGカンパニー向け、一方、高価格帯のニッチマ
ーケット(アッパーニッチ)は中小零細企業向けです。ミドル
ゾーンやロアゾーンではなく、アッパーゾーンの価格帯を狙っ
てください。1斤200円の食パンマーケットは大手メーカーで寡
占状態ですが、1斤800円の食パンマーケットには、まだまだ空
きがあるはずです。

◎アッパーニッチ(高価格帯の隙間)を狙ってください。

5.オペレーションがシンプル・簡単な事業に仕上げる。

複雑さは高コストの主因です。運営コストを押し上げるだけで
なく、運営者に高いスキルを求めることになります。現場のオ
ペレーションでの差別化ではなく、ビジネスモデルや事業立地
での差別化を目指しましょう。事業の設計図は単純・明快が理
想です。

◎シンプルな運営、シンプルな現場、意識してください。

6.最後に、「週刊東洋経済、2015年9月12日、特集経
営学の教科書」(東洋経済新報社)に寄稿された、「高収益企
業の創り方」(東洋経済新報社、三品和広氏〔神戸大学大学院・
経営学研究科教授〕)の著者である、三品和広教授の記事を引
用して紹介させていただきます。
『…(高収益企業の研究を通じて)成功例に共通している点は
一目瞭然だった。「事業立地」がよいということだ。仕事の仕
方の工夫や製品開発ではなく、そもそも「何屋さんをやるか」
の選び方が優れている。事業立地の考え方では、ある市場の中
でどこにポジションするかよりもむしろ、そもそもどの市場を
選ぶかが重要になってくる。…』

一生懸命頑張ること、これは中小零細企業経営者にとって重要
なことです。ただ、これは成功のための必要条件であって、十
分条件ではありません。十分条件は、頑張ることで、社長自身
も会社も、従業員も報われる事業を選定・設計することです。
社長には、この十分条件を検証し続ける責務があります。これ
こそが、経営者に求められる経営力です。この経営力を磨くた
めに費やす勉強時間とお金をしっかり確保してください。努力
がよりたくさんの成果を生み出せるような事業を選択してくだ
さい。

事業計画書とは未来に向かって事業をどのように進めていくか
をまとめた資料です。事業プランをまとめた「事業概要書」と、
売上と利益の推移見込みをまとめた「数値計画書」で構成され
るのが一般的です。

インターネット等から、「事業計画書の書き方」等の情報を入
手することは容易ですが、ひとことで「事業計画書」と言って
も、その目的によって書き方は違います。まずは、ご自身が、
何のために事業計画書を作成しようとしているかを明確にしま
しょう。

■ 事業計画書を作成する目的の例
・自身の構想をまとめるため。
・従業員、株主等に会社のビジョンを示すため。
・金融機関から資金を調達するため。

自身の構想をまとめるために作成する事業計画書は、ご自身の
思いのままに作成すればよいでしょう。見せる相手は自分です
ので、自分が納得するように作成します。数値計画も、ご自身
が実現可能と考える最大値で作成するのが一般的ではないでし
ょうか。

従業員、株主等に会社のビジョンを示すために作成する場合は、
自社がいかに素晴らしい会社であるかを伝えなくてはなりませ
ん。消極的な計画では従業員の士気も上がらないでしょうし、
投資家も魅力を感じません。従って数値計画は、希望的観測を
含めて、少しオーバーに作成するのが一般的かもしれません。

気をつけていただきたいのは金融機関に提出する事業計画書で
す。誤解を恐れずに申し上げますと、金融機関に事業計画書を
提出する目的は、会社の魅力を伝えることより、返済の確実性
を伝えることの方が優先されます。金融機関は、「資金があれ
ば、優秀な人材が集まれば、ヒット商品が出れば・・・日本有
数のビッグカンパニーになれる。」といった、多くの前提条件
の上に成り立った事業計画書よりも、「資金が獲得できなかっ
たとしても、優秀な人材が集まらなかったとしても、ヒット商
品が出なかったとしても・・・返済は大丈夫です。」という事
業計画書を望んでいます。

また、金融機関からいくらの支援を取りつけようとしているか
でも計画書の内容は変わります。1,000万円の融資依頼に
対して、世界制覇を目論む事業計画書を作成してしまうと、夢
想家と思われてしまいます。この場合は、将来的には世界制覇
を目論んでいるが・・・まずは1,000万円で県内制覇をす
るという計画書を作成するのが妥当です。

金融機関向けに提出する事業計画書の作成ポイントは、「返済
の確実性を示すために、今回調達する資金で実現できる範囲の
計画を作成すること。」です。心掛けてください。

過去の失敗を経て、再起を図ろうとする社長様からの相談を時
折受けます。再起の末、成功を収められた社長様も少なくあり
ません。逆に、失敗を繰り返す社長様もおられます。

■成功するか?失敗を繰り返すか?の差は、過去を総括できて
いるかどうかで決まります。

◆「前回失敗した理由が自分以外にある」とおっしゃる社長様
は、失敗を繰り返します。運が悪かった、だまされた、景気が…
このような言い訳を繰り返す人は、ほぼ間違えなくこれからも
失敗します。

○運が悪かったは、「判断を間違えた」であり、「判断を間違
えるのは自分自身の判断基準が悪かった」からです。結局、ご
自身の能力不足です。
○だまされた、景気が…これも同じです。
運が悪かった、だまされた、景気が…すべての事象を自身の問
題として認識できない間は、何度でも同じ過ちを繰り返します。

◆再起した会社が経営危機に陥る理由は、前回失敗した理由と
同じです。
売上至上主義、無管理経営で、ただやみくもに売上の拡大に奔
走する社長が経営危機対策の相談に来所されました。直近期大
幅な増収でありながら、営業赤字に転落しています。
増収でありながら、利益率の大幅な低下、固定費の増大になっ
ています。そして、「売上をいくら伸ばしたら黒字になります
か?」とおっしゃいます。前回の失敗の理由をお聴きすると、
「主要取引先の理不尽な取引条件の変更と銀行の貸し渋り」と
総括されます。

○この社長は、「安売り症候群」と呼ばれる病に侵されていま
す。利益率より売上高、経営管理より我武者羅に売り歩く…こ
のような病です。前回の失敗も同じでした。今回も、同じ病が
原因で経営危機に直面しています。

■失敗の原因を確実に総括しておかないと、過ちを繰り返しま
す。ご自身の患っている経営者としての病を治してください。

○(当事務所)「今回の経営危機の原因は、売上至上主義と無
管理経営に端を発した収益の悪化です。この結果を招いたのは、
100%社長様、あなたの責任です。社長様は、『安売り症候群』
という経営(社長)の病を患っています。前回の失敗の原因も、
(事情をお聴きすると)今回の原因と同じです。取引先や銀行
貸し渋りが原因ではありません。この病を治療して治さないと、
再度破たんします。」と助言しました。

◎(相談者様)「よくわかりました。どうすればよいですか?」

○(当事務所)「まず、売上高・粗利益率・固定費の三つをバ
ランスよく構成する月次の経営計画を作ります。売上至上主義
を脱して、バランスの良い経営を目指します。その上で、進捗
を月次で管理します。当事務所(病院)がお手伝いいたします。
『安売り症候群』、利益率より売上高、経営管理より我武者羅
に売り歩く…この病の完治を目指しましょう。」

■失敗を経験することは、本来無駄ではありません。学んだ分
強くなることができるからです。

◆賢明な社長様は、前回の失敗の原因をしっかりと自覚して、
総括をしっかり済まされておられます。同じ轍を二度は踏まな
い、この決意で臨まれます。

◆一方、前回の失敗の責任を、自分以外の外部要因に転嫁され
ておられる社長様は、失敗の総括ができていないために、同じ
過ちを繰り返しがちです。

他人の責任で自分が失敗することなど100%ありません。
失敗したら、必ず総括して、次に生かしてください。(小さな
失敗でも)この総括を繰り返すことで、社長力が磨かれていく
はずです。
このような相談も承ります。まずは、ご相談ください。

「税金とどう向き合っていくか。」というのは、財務の大きな
テーマのひとつです。納税が資金繰りを圧迫することもありま
すし、税金に対する過度な意識が、会社の成長を妨げる要因に
なることもあります。税金に対して、どのように対処するのが
正解でしょうか。

大多数の方は、支払う税金は少ない方が嬉しいでしょう。しか
し、支払う税金が少ない代わりに、銀行からの借入ができなく
なっては困るはずです。税金が少ないということは、利益が少
ないということですので、銀行の評価は低くなります。「税金
を減らすこと」と「借入可能額を増やすこと」は二者択一です。
どちらに比重を置いて経営をするのか、自社の状況に合わせて
方針を決める必要があります。

また、「税金を払わないこと」が目的になってしまうと、最も
重要なキャッシュフローがおろそかになることがあります。税
金を減らす手法として、保険や設備投資等、さまざまな方法が
ありますが、大半が素直に税金を払うよりも多くの資金を必要
とします。財務の第一原則はキャッシュを切らさないことです
ので、節税が資金繰りを圧迫しないよう細心の注意が必要です。

消費税は、お客様から事前に預かっている税金です。法人税等
は利益の35%程度です。普通に考えると払えないはずはあり
ません。しかし、税金を楽に払えるという企業様は殆どいらっ
しゃらないのではないでしょうか。中には、資金をかき集めて
納税をされる企業様も少なくありません。

納税が重たく感じられるのは、現金化されていない利益にも税
金がかかっていたり、預り金や利益が、設備投資や借入の返済
に充てられたりしているためです。従って、売上金の回収より
も支払が先行する企業様や、在庫をたくさん持たなくてはなら
ない企業様は、税金の支払いが苦しくなるのは当然です。

しかし、納税が苦しいからといって利益(税金)を減らそうと
考えるのは大変危険です。利益を減らせば借入も出来なくなる
ため、成長資金の獲得ができず、いつまでたっても零細企業か
ら脱却できなくなります。納税が苦しいときの正しい対処法は
ファイナンスです。利益が現金化されるまでの資金、設備投資
が利益を生むようになるまでの資金は、しっかりと借入で対応
しておけば、決算の時に慌てることはないはずです。

指針のまとめです。もし貴社が、安定した売上高と利益を毎期
獲得できるぐらい成熟していて、また、今後借入を活用して事
業を伸ばす予定もない場合は、内部留保が優先ですので、キャ
ッシュフローに影響がない範囲で節税を行いましょう。もし貴
社が成長の途上にあり、今後も借入は不可欠であるという場合
は、成長資金の獲得が優先ですので、思い切って利益を出すよ
うにしましょう。但し、納税で資金ショートを起こさないよう、
常日頃から資金調達はしっかりと行ってください。

前回のつづきです。

「事業の内容や成長可能性等を適正に評価(事業性評価)して
…」、様々な人が行う様々な事業の、その事業内容や成長可能
性を正しく評価できる方法は存在するのでしょうか?
答えは、NOではないがYESとも言い難い、と言ったところ
でしょうか。この前提で話を進めます。

前回とは少し違う視点で整理します。

1.過去から現在までがうまく行っておれば、さらに、そのう
まく行くレベルが向上しておれば、概ね当面はうまく行きそう
と推定できるため、事業性評価は○になるはずです。
具体的には、過去の決算書を数期並べて、右肩上がり(又は横
ばい)の増収・増益(又は安定収益)、直近の資産状況(BS)
に不備がなく、さらに、この成長曲線(横這い)の延長線上の
事業計画を持っておれば事業性評価は○でしょう。

2.事業体としての過去が無い新設事業者の評価(創業融資)
時には、経営者の経歴と自己資金を勘案します。これは、事業
体の過去を経営者の経歴に、足元のBSを自己資金に置き換え
た考え方です。さらに、創業事業計画の妥当性は、その計画の
蓋然性が適用されます。これぐらいの売上は立ちそう、経費は
これぐらいあれば足りそう、このような一般常識をあてはめて
判断します。
経歴と自己資金、計画の蓋然性が整えば、創業者の事業性評価
は○になるはずです。
※自己資金要件については、政策的に審査が緩くなる趨勢です。

3.事業の将来性を評価する時は、その事業の事業立地が勘案
されます。これは1.を前提にした上での、加点又は減点の要
素です。
例えば、インバウンド、IoTやシェアリングエコノミ-は、
事業立地として加点要素でしょうが、どこにでもある○○屋さ
んでは加点されません。逆に、不況業種は減点でしょう。何屋
さんをやるか、事業立地も事業性評価には重要な要素です。
事業立地は、1.の条件が整った上での要素ですが、1.の悪
さを覆せる事業立地の優位性があればこの限りではありません。
ただし、この判断は極めて難解です。

4.知的所有権の有無も事業性評価のひとつになるはずですが、
3.と同じく、1.の条件を補完する要素と考えた方が良さそ
うです。もちろん、1.の悪さを覆せるぐらいの知的所有権で
あれば別ですが。

事業性評価(融資)、この発想は決して目新しいものではあり
ません。金融機関は従前より、金融庁の検査マニュアルの有無、
内容に関わらず、事業性評価を行ってきました。金融機関が求
める取引先は、あくまでも返済してくれる会社・安定した会社・
伸びる会社であるため、事業性評価は必要でした。

◆金融検査マニュアルが整備される前は…
1.を軸に、3.や4.その他あらゆる要素を加点・減点要因
に組み込んで、金融機関独自の融資判断基準を有していました。
結果、時に大胆な企業支援が実施され、後のBIGカンパニー
を創出してきました。

◆金融検査マニュアルが整備された後は…
1.を判断基準にしなさいとする厳しいルールが課されたため、
3.や4.の要素を融資判断に組み込むことが難しくなったた
めに、画一的な融資審査が行われるようになりました。この背
景には、バブルの崩壊で傷ついた金融機関自身のBSを是正す
る狙いがあったためです。また、この期間に金融機関は3.4.
その他の判断力=目利き力を無くしてしまったようです。

◆今後は…
金融検査マニュアルが整備される前に戻るはずです。1.を軸
に、3.や4.その他あらゆる要素を加点・減点要因に組み込
んで、金融機関独自の融資判断基準が構築されることでしょう。
ただし、
◎あくまでも1.が判断基準の肝であることに変わりはありま
せん。
◎3.や4.その他は、企業側が、積極的に情報発信していか
ないと、金融機関には気付いてもらえません。

事業性評価融資の導入で、金融機関の融資は変化するはずです。
ただし、その変化は突拍子もないものではありません。事業体
として至極当然のことを突き詰めていくことこそが、金融機関
が行う事業性評価融資の基準に適合することになります。ただ
し、今まで以上に金融機関にわかってもらう努力、とりわけて
情報提供を継続的に行うことが重要になってきます。このこと
は、肝に銘じてください。
※金融機関はモニタリング機能を充実させるはずです。

資金調達の手段は、デットファイナンスとエクイティファイナ
ンスに大別できます。デットファイナンスとは「借入」のこと
であり、エクイティファイナンスとは「増資」のことです。中
小企業の殆どは、デットファイナンスによる調達が主体ではあ
りますが、エクイティファイナンスの仕組みを知ることで、調
達の幅が広がる可能性があります。

エクイティファイナンスは、会社が新しい株式を発行し、株式
を投資家に買ってもらうことで資金を調達する仕組みです。借
入ではなく増資ですので返済の必要はありません。そのかわり、
投資家には株式の持ち分に応じた権利が発生します。

エクイティファイナンスは、株式を買ってもらえる投資家が居
てはじめて成立します。無償の支援を仰げる親族や友人は別で
すが、投資家は何らかの目的があって投資を行いますので、投
資家のニーズを的確に満たすことが、エクイティファイナンス
の成功の鍵となります。

投資家の代表として、ベンチャーキャピタル、投資ファンド、
エンジェルなどが挙げられますが、これらの投資家の目的は
「利益」です。取得した株式を将来第三者に高値で売却するこ
とが主たる目的ですので、会社が上場して株式が市場で売却で
きるようになること、もしくは、M&Aで会社を他の会社に売
却することが大前提です。よって、上場やバイアウトの計画が
ない場合は、この手の投資家を呼び込むことはできません。

上場やバイアウトを考えていない企業でも、企業同士の関係強
化を目的としたエクイティファイナンスは可能性があります。
例えば、貴社が強い販売力を持っているとして、その販売力を
魅力に感じるメーカーがあれば、貴社に投資をする動機になり
ます。中小企業のエクイティファイナンスは業務資本提携が現
実的です。

ただ、エクイティファイナンスにはデメリットもあります。業
績が思うように進捗しない場合等は、株主との関係が悪化し、
自分の思い通りに経営ができなくなってしまうことがあります。
このような時でも最悪の事態に陥らないよう、エクイティファ
イナンスは持ち分のコントロール(資本政策)が重要です。

平成27年度金融行政方針(15年9月)では、事業性評価につい
て、「…担保・保証に依存する融資姿勢を改め、取引先企業の
事業の内容や成長可能性等を適正に評価(事業性評価)し、融
資や本業支援等を通じて、地域産業・企業の生産性向上や円滑
な新陳代謝の促進を図り、地方創生に貢献していくことが期待
される。…」と解説されています。

金融行政の転換期です。少しずつ、中小企業金融の現場にも動
きが出てきました。事業性評価融資の導入で変わること、変わ
らないことを整理いたします。

■以下の1と2は、今後とも変わりません。

1.金融機関が保有する傘はすべて「日傘」です。
変わりません。

良い会社(返済してくれる会社)に対して融資を行おうとする
基本姿勢は変わりません。経営が、現状もうまく行っていない
会社、将来もうまく行きそうでない会社に対する融資は実行さ
れません。金融機関が有する傘は「雨傘」ではなく「日傘」※
である点は変わりません。
※一部の制度融資・制度保証は除きます。

2.資本の充足状況(BS)と生み出すキャッシュフロー(PL)
の金額、この二つの判断基準は、今後とも融資審査の礎です。

現行の評価方法は存続します。資本が充足していること、生み
出すキャッシュフローが多いこと、これらの(現時点における)
良い会社の条件は変わりようがありません。この二つは、これ
からも財務上の良し悪しの判断基準であるはずです。ただし、
少額の資本正と資本負(債務超過)の差異で大きく結果が変わ
ることはなくなるかもしれません。また、債務償還年数10年未
満が正常先、このような画一的な判断も減るはずです。

上記の1と2は、融資可否判断の原理・原則です。これからも
不変です。

■以下の3は、少しずつ変わってきました。

3.担保・保証依存からの脱却が徐々に進みます。

担保と保証に依存する融資姿勢は徐々に改められるはずです。
逆に、優良な担保や保証が有っても、事業の評価が悪ければ融
資を受けられないことになります。この傾向は現時点でも顕在
化してきました。

■以下4の変化が、事業性評価融資の浸透で起きてくるはずで
す。今までの基準+4とご理解ください。

4.事業の将来性を見極めるための評価、事業性評価が導入さ
れます。

「現状の財務状況は良くないが、将来を見越して融資を実行す
る」または、「現状の財務状況の程度を越えて、将来を見越し
て多額の融資を実行する」、この将来を見越しての部分が事業
性評価です。
経営の現時点における結果を財務(資本の充足状況とキャッシ
ュフロー)から判断して、良ければ融資可、悪ければ融資不可
とする現行フローの変更が金融機関に求められます。現行フロ
ーに付加して、将来良くなる見込み、良くならない見込み、こ
の判断を行う基準の構築が必要になります。
当該企業体の経営が将来どうなるか?これを見込むのは、現時
点の財務を分析して判断するのとは比べ物にならないぐらい難
解です。ただ、この新しいソリューションを開発・構築するこ
とを、地域金融機関は求められています。構築できなければ淘
汰されるはずです。

■地域金融機関が事業性評価を導入する方向性は、どの金融機
関も概ね同じです。

(1)過去から現在までの流れ、将来の計画を踏まえて判断す
ることになります。
○現時点の財務の良し悪しではなく、将来の経営全般を予測す
るために、過去から現在までの流れの把握・分析が必要になり
ます。事業性評価結果の進捗確認や見直しのための継続的なモ
ニタリングがますます重要になります。

(2)財務以外の企業情報を収集して判断することになります。
○会社の将来展望・ビジョン
○経営者の情報、経歴や強み、人となり、後継者の有無
○市場における優位性や競合状況
○商品・サービスの特徴
○会社の課題と強み・弱み
等々、財務以外の情報の収集・分析が必要です。
金融機関は、これらを総合的に勘案して事業性評価を行います。
今までよりも、より深く対象企業を理解する必要性が生まれま
す。

(1)(2)を突き詰めて行く過程において、独自の事業性評
価を開発することを地域金融機関は期待されています。この独
自の事業性評価が、そのまま金融機関の個性となって、より広
範な企業支援を行える金融業界が近い将来生まれることでしょ
う。一方、この過程で、多くの地域金融機関の淘汰・統合も進
むようです。

■まとめ…

現時点の財務状況及び担保・保証の有無で融資の可否を判断し、
その可となる企業に集中して融資を行った結果、金融機関同士
の(金利)過当競争が生じています。今後は、現時点の財務状
況や担保・保証の有無のみに依存せず、それに付加して新たな
融資基準(事業性評価)が構築されるはずです。容易ではあり
ませんが、この取り組みは、融資規模を拡大する動きであるこ
とに間違えありません。歓迎すべき動きです。
一方、情報をより正確に提供できる企業が、事業性評価の対象
になりやすくなるはずです。情報提供力・説明力が資金調達力
とより相関するようになります。融資を受ける側の力量も問わ
れます。

政府の中小企業金融政策で最も重要な役割を果たしているのが
信用保証協会です。信用保証制度は時代の流れとともに、その
役割を少しずつ変化させてきました。近い将来、信用保証制度
がどのように変化するのか、2016年12月に有識者会議でまとめ
られた報告書から読み取ります。

信用保証制度とは、中小企業が金融機関から融資を受けやすく
するため、金融機関に対して信用保証協会が債務を保証する制
度です。金融機関にとっては、いざという時には国が返済して
くれるため、企業の信用力が低くても、安心して融資をするこ
とができます。

しかし、金融機関にリスクが全くないため、信用保証付き融資
のみの企業に対して、支援姿勢が弱くなるという傾向が見られ
ました。よって、平成19年から、保証割合を100%から80%に
改正し、金融機関も20%のリスクを取るよう変更されています。

以降、この保証割合を80%からさらに減らしていくことが大き
な論点となってきましたが、2016年12月にまとめられた報告書
で最終的な概要が見えてきました。

■ リスク分担について
保証割合は現行のまま、80%が保証協会、20%が金融機関とい
う結論です。理由は、保証割合を変更するのではなく、企業の
借入全体に占める金融機関のプロパー融資の割合で、実質的な
リスク分担を行う方が有効だという判断です。

他にも、企業のライフステージ各局面における施策についてま
とめられました。

1.創業期の施策
過去の実績など、事業リスクを判断する材料がないため、金融
機関は創業企業に融資をしにくいという課題があります。一方
で、創業期は、事業を軌道に乗せるまでに相当程度の資金を必
要とするため、創業者向け保証制度の限度額が、1,000万円から
2,000万円に拡充される見込みです。

2.拡大期の施策
事業を拡大するための設備資金や増加運転資金が必要となる局
面です。先行投資により収益が一旦悪化しますが、中小企業か
ら中堅企業に成長発展する過程においては、一定程度のプロパ
ー融資を確保し、保証への依存度を下げることが望ましいとさ
れました。保証協会からの卒業をうながしています。

3.持続的発展期の施策
中小企業の中でも、とりわけ小規模事業者の場合は、信用力が
低くプロパー融資が十分に行われない恐れがあります。よって
小規模事業者向け保証制度の限度額が1,250万円から2,000万円
に拡充される見込みです。

4.再生期等
限度額まで借入を行っているにもかかわらず、経営上の課題が
残されている場合も多く、新規資金の調達が困難な状況です。
プロパー融資の維持など、金融機関の支援姿勢が確保できてい
る前提で一定の支援がなされます。また、円滑な撤退を可能と
するための保証メニューの充実なども検討されるようです。

5.危機時の対応
自然災害、不況業種等の支援策として、保証割合が100%のセ
ーフティネット保証がありますが、不況業種への保証について
は、100%保証が活用し続けられると、企業の経営改善が進ま
ないこととなりかねないため、不況業種へのセーフティネット
保証制度は、保証割合が100%から80%に改正される見込みで
す。

今回の改正により見えてきた方針は、創業期は政府主導による
支援、そこから成長発展していく企業は民間金融機関がプロパ
ー融資で支援、そのまま小規模事業に留まる企業は引き続き政
府主導による支援、再生段階にある企業は金融機関主導で選別
を強化する流れと感じます。創業を歓迎し、不況業種への支援
体制は薄く、再生期の企業が撤退しやすい環境を整え、新陳代
謝を促す動きが加速しそうです。