借入余力のない中小企業は「借りられるときに借りる」が鉄則
です。しかし長期金利が1%台半ばへ上昇する最近は、潤沢な
手許資金が高い利息で目減りするリスクも無視できません。今
回は、銀行格付けでも採用される2つの指標を使い、自社の
「金利許容量」を数値で設定する方法を解説します。

1.利息/営業CF比率―15%を超えたら要警戒

まず年間利息総額を営業CFで割り、「利息比率」を算出しま
す。

・10%未満:安定ゾーン(利上げや利益減でも余裕)
・15%前後:警戒ライン(改善策を検討する目安)
・20%超:危険ゾーン(銀行が金利上乗せや担保追加を検討)

この15%という数字は、後述するDSCR(返済余力指標)で
安全域を保つための経験則です。たとえば営業CFが4,000万
円、利息が600万円なら比率は15%。ここを超えると、元金返
済を含めたキャッシュアウトが営業CFの70%近くまで食い込
む可能性が高まり、手元資金が急減しやすくなります。

2.DSCR1.2倍―銀行が見る最低ライン

次にDSCR(Debt Service Coverage Ratio)=営業CF÷
元利支払額を計算しましょう。金融庁マニュアルでは1.2倍以
上が健全とされます。

・1.5倍以上:安全
・1.2~1.5倍:注意
・1.2倍未満:改善要請

利息比率を15%以下に保てば、多くのケースでDSCRは1.6
~2.0倍を維持できます。逆に利息比率が20%に達すると、元
金返済を含めた支払総額が営業CFの6割超となり、ちょっと
した利上げや売上減で1.2倍を割り込むリスクが高まります。

3.自社ラインの設定とシミュレーション
(1)営業CFの現状値と3年平均を算出
(2)利息総額を0.25%刻みで引き上げた場合の比率とDSCR
を試算
(3)15%・20%をまたぐポイントで「返済計画の見直し」
「金利交渉」「高金利繰上返済」のトリガーを設定

たとえば0.5%の金利上昇で利息が900万円へ増えると試算され
るなら、上昇分を相殺する粗利改善(売上1億円×粗利率3%
アップ=300万円)か、短期借入1億円の半分を返済して残高を
圧縮する、という対策を事前に決めておきます。

4.実務で使える3つのアクション
・月次で利息比率を確認し、15%を超えた月にアラートを出す
・設備更新など大口投資の前にDSCR試算表を銀行と共有し、
借入総量と金利を協議
・高金利短期枠を低利長期へ借換えし、比率を下げつつ手元資
金3か月分は死守

■ まとめ
・利息比率15%を黄色信号、20%を赤信号として社内ルール
化する
・DSCR1.2倍を割らないよう、利息・元金・営業CFをセ
ットで管理
・試算表に金利シミュレーション列を加え、銀行と改善策を早
めに協議

金利の先行きは読めなくても、許容コストのラインは自社で決
められます。この2指標を月次で追い、借り過ぎと利息の払い
過ぎを防ぎながら、必要なときに十分借りられる体制を維持し
ましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です