「今年度の最低賃金について議論していた厚生労働省の審議会
は24日夜に決着し、物価の上昇が続いていることなどを踏まえ、
過去最大となる時給で50円引き上げる目安でまとまりました。
全国平均の時給は1054円となり、これまでで最も高くなります。
最低賃金は企業が労働者に最低限支払わなければならない賃金
で、現在の時給は全国平均で1004円です。24日夜、労使双方
が参加した審議会が決着し、時給で50円、率にして5%引き上
げるとする目安でまとまりました。引き上げ額は去年の43円を
超えて過去最大です。」(2024年7月25日 厚生労働省ニュース
より引用〕
最低賃金の上昇率は、すべての報酬の昇給率にも影響します。
賃上げ5%が必要であるとの意味です。賃上げ5%以上の予算
化が必要です。
賃金が上がることは、労働者にとっては収入の増加や生活水準
の向上を意味しますが、企業にとってはさまざまな対応を迫ら
れる重要な課題です。対策にウルトラCはありません。貴社に
とって必要な項目を確認し、丁寧に対応していくしかありませ
ん。企業が賃金の引き上げにどのように対応するかについて、
以下に解説いたします。
■1.コスト管理の見直し
最低賃金の引き上げは、企業の人件費の増加を直接引き起こし
ます。特に、労働集約型の業界や中小企業では、この影響が大
きくなります。企業はまず、コスト構造全体を見直す必要があ
ります。無駄な経費の削減や業務効率化、固定費の変動費化な
ど、総コストを削減するための取り組みが求められます。
■2.労働生産性の向上
コストを削減する一方で、労働生産性を向上させることも重要
です。これには、従業員のスキルアップや教育訓練の強化、業
務プロセスの改善、そして自動化技術の導入などが含まれます。
例えば、最新のIT技術やロボット等を活用して業務を効率化
することにより、同じ労働時間でより多くの成果を上げられる
ようにすることが必要です。
■3.商品・サービスの価格設定
最低賃金の上昇は、最終的には商品の価格に転嫁されることが
一般的です。ただし、価格を上げることで顧客離れが起こるリ
スクもあります。企業は市場動向や競合他社の動きを注視し、
適切な価格設定を行う必要があります。また、価格を上げる際
には、付加価値の向上やサービスの改善を同時に行うことで、
顧客に納得してもらう工夫も必要です。
■4.雇用形態の多様化
人件費の増加に対しては、雇用形態の見直しも一つの対策にな
ります。正社員を減らし、パートタイムやアルバイト、契約社
員を増やすことで、柔軟な人員配置を行うことができます。ま
た、リモートワークの導入やフレックスタイム制の導入など、
働き方の多様化を進めることも有効です。これにより、効率的
な運営を行うことが重要です。
■5.財務戦略の再検討
最低賃金の引き上げによるコスト増加を乗り切るために、企業
の財務戦略も再検討が必要です。借入金の見直しや資金調達方
法の多様化、投資計画の修正など、企業の財務基盤を強化する
取り組みが求められます。また、政府や地方自治体の助成金や
補助金を活用することにより、最低賃金の引き上げに伴う財務
的な負担を軽減することも必要です。
■6.社内コミュニケーションの強化
最低賃金の引き上げに対する企業の対応策を従業員に理解して
もらうことも重要です。透明性のあるコミュニケーションを通
じて、企業の方針や取り組みを従業員に伝え、協力を求めるこ
とが必要です。また、従業員の意見やアイデアを積極的に取り
入れることで、現場のニーズに合った対応策を策定することに
も心がけましょう。
■7.顧客対応の強化
最低賃金の引き上げにより、コスト増加分を価格に転嫁する場
合、顧客対応も重要な課題となります。顧客に対して価格改定
の理由を丁寧に説明し、理解を得る努力が必要です。また、価
格改定に伴い、顧客サービスの向上や付加価値の提供を通じて、
顧客満足度を維持・向上させることが求められます。
最低賃金の引き上げは、企業にとってさまざまな課題を引き起
こしますが、それに対する適切な対応策を講じることで、企業
の持続可能な成長を実現することが可能です。コスト管理の見
直し、労働生産性の向上、価格設定の工夫、雇用形態の多様化、
財務戦略の再検討、社内外のコミュニケーションの強化など、
総合的な対策を講じることが重要です。企業は、変化する経済
環境に柔軟に対応し、持続的な競争力を維持するための努力を
続ける必要があります。
厳しいと感じる方も多いでしょうが、避けて通れない現実です。
受け入れて対策を打つしかありません。