…前回号の続きです。
事業計画の要諦は、事業立地を成長分野に転換することです。
創業以来、先代の代から…ただ同じ事業を継続しています。事
業を創る、事業立地を再定義する、イノベーションを仕掛ける、
こうした発想自体が存在しません。それでも、社長も従業員も
皆、真面目に日々の仕事に取り組んでいます。結果として、そ
の会社は静かに衰退し、ある時突然、その役割を終えることに
なります。
「今年生まれた子どもが二十年後に就職する頃、存在している
会社の半分は、今はまだ存在していない」と言われます。二十
年で企業の半分が入れ替わるという仮説です。おそらく現実に
近いでしょう。AIに代替される業種が話題になりますが、自
社が該当するかを過度に心配する必要はありません。結局、す
べての企業は時代に取って代わられる存在だからです。
変化しなければ、企業は存在意義を失います。時代ごとのニー
ズに応え続けることが、生き残るための条件です。経営とは、
連続した小さな変化を積み重ねる営みです。その小さな変化が、
やがて大きな変革へとつながります。急激に変わったように見
える企業も、実態は小さな変化の積み重ねに過ぎません。
■本稿では「事業計画を策定する」というテーマについて述べ
ています。
事業計画とは、変化を生み出すための“種”です。何を、どの
ように変え、いつまでにどの姿を目指すのか、この仮説こそが
事業計画です。過去の延長線上にある数値計画を作って満足し
てはいけません。
■事業計画作成時の重要ポイント
策定にあたって、次の要素が含まれているか確認してください。
・事業立地の見直しやイノベーションが織り込まれているか
・収益モデルの創造・再構築ができているか
・現状認識は十分か
・(仮)のゴール〔マイルストーン〕を設定できているか
・全体として整合性の取れた数値計画になっているか
・数値計画と資金計画の整合性を確認しているか
・マネジメント体制は成長に耐えうるか、また妥当か
・日々修正しながら現実的に対応できる設計か
■経営者の仕事は、事業立地とビジネスモデルの検証・構築、
すなわち事業計画の立案と見直しに尽きます。
経営者の仕事は多岐にわたります。しかし重要度の低いものか
ら削ぎ落としていくと、最後に残るのは「事業立地とビジネス
モデルの検証・構築」、つまり事業計画の立案と見直しです。
それにもかかわらず、多くの経営者はこの最重要業務を疎かに
しています。その結果、経営者不在の企業体になっています。
創業時や先代から受け継いだビジネスモデルを進化させること
なく、惰性で継続しているのです。過去の事業を時間軸で延ば
しただけの数値計画を事業計画と呼び、自己満足に陥っていま
す。体裁の良い数値計画は、決して事業計画ではありません。
肝に銘じてください。
■経営者には三つの「胆力」が求められます。
経営にウルトラCはほとんどありません。一つひとつ理詰めで
考え、確実に行動し、都度修正しながら積み上げていく。この
地道な営みを淡々と続けることが、王道です。
・理詰めで考え続ける知力と、それを持続する知的胆力
・行動し続ける実行力と、それを支える肉体的胆力
・思うように進まない状況に耐える精神力と、その精神的胆力
■事業計画とは、江戸時代に中国奥地を目指す長旅の旅程表の
ようなものです。
存在が定かでないゴールに向かい、一歩ずつ進まねばなりませ
ん。日本から中国奥地を目指すなら、まず大陸へ渡る方法を考
え、航路を探し、港へ向かうための資金を用意します。大陸に
渡っても、先の道が見えるとは限りません。それでも前に進み
ます。ゴールまでの費用が読めなくても、一歩ずつ進みます。
その過程では、数多くのトラブルにも遭遇するでしょう。それ
らを回避し、あるいは解決しながら、不確実なゴールに向かっ
て歩み続けるのです。この旅に、明確な終点はありません。
経営とは、ゴールではなく、そのプロセスそのものなのかもし
れません。知的胆力、肉体的胆力、精神的胆力を鍛えながら、
経営という長い旅に挑み続けましょう。楽しみながら。
新年を迎えるにあたり、経営を見つめ直す一つの契機となれば
幸いです。
