ここ最近、金融機関の姿勢が目に見えて変わってきました。
つい昨年までは「預金は不要」「融資に集中したい」と言って
いた銀行が、金利上昇を背景に「預金をおいてほしい」と口に
するようになっています。
マイナス金利が解除され、銀行にとって預金が「コスト」から
「収益源」に戻ったためです。

これまで預金を集めても運用先がなく、むしろ利ざやを圧迫し
ていた時代から一転、今は預金残高が金利収入に直結する環境
に変わりました。
銀行にとって「預金は積極的に集めたいもの」へと再び立ち位
置が変わっています。

■ 銀行の“預金をお願いしたい”という本音
銀行の営業担当者にとって、預金は融資と同じく評価対象です。
特に法人預金は安定した資金調達源として重視されます。
預金残高が増えれば、運用益で収益が上がる構造になったため、
現在は「預金も融資も」という営業方針が主流になっています。

一方で、金融庁の監督下では「歩積み両建て(融資と預金をセ
ットで強制する行為)」が問題視されています。
したがって、銀行としても、“預金してほしいが強制できない”
というジレンマを抱えています。
結果として、経営者に対して「お願いベース」での預金協力を
求めるケースが増えています。

■ 経営者はどう対応すべきか
銀行が預金を求める背景と表立って預金を強制できない事情を
理解したうえで、関係性の深さと実益のバランスで判断するこ
とがポイントです。

1.メインバンクへの協力は「信頼投資」として割り切る。
融資取引が大きく、今後も付き合いが続く銀行には、預金残高
をある程度確保しておくのも一つの戦略です。「貸してくれる
銀行を支える」という姿勢は、次の融資や条件交渉でプラスに
働きます。

2.サブバンクには合理性で判断する。
預金残高を複数行に分散させると、資金管理が煩雑になります。
融資比率や将来の取引可能性を見て、預金配分を整理しましょ
う。

3.資金繰りに支障をきたす協力は避ける。
預金を置くことで手元資金が減り、実質的に自由に使えるキャ
ッシュが減るのは本末転倒です。流動性を確保したうえで、余
剰資金を置く程度にとどめるのが現実的です。

■ まとめ
金利上昇局面では、銀行の「お金の論理」も変わります。
預金を求める姿勢が強まるのは自然な流れですが、経営者とし
ては

・銀行の立場を理解し、
・自社の資金繰りに無理のない範囲で、
・戦略的に協力する、

この三点を意識することが大切です。

銀行との関係は“力関係”ではなく“信頼関係”で築かれます。
預金を通じた関係強化も、その一つの手段にすぎません。
「協力はしても、依存はしない」この距離感が、金利上昇時代
の賢い銀行対応と考えます。

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