先日、あるオールドビジネスを主業とする関与先様から「将来
的に上場したいのだが可能だろうか」と相談を受けました。長
年にわたり堅実に業績を積み重ねてきた企業で、売上も安定し
ています。しかし、新規性のあるビジネスではないため、株式
市場でどのように評価されるかを知りたいとのことでした。

「上場」と聞くと、急成長するITベンチャーやスタートアップ
を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、オールドビ
ジネスであっても、安定実績を武器に上場を果たす会社は少な
くありません。むしろ投資家からは「基盤のしっかりした企業」
として安心感を持たれるケースもあります。

とはいえ課題となるのは「成長性」と「新規性」です。成熟市
場に属していると投資家から「伸びしろがないのではないか」
と疑問を持たれやすく、株価がつきにくいのも事実です。ここ
をどう乗り越えるかがポイントになります。

第一のヒントは、成長ストーリーを描くことです。たとえば既
存事業を基盤にした海外展開、サステナブル素材への対応、
DXを活用した付加価値強化、あるいはM&Aによる新市場進
出等です。実績に裏打ちされた安定感に、次の一手を重ねるこ
とで「未来の伸びしろ」を提示できます。

第二に、非財務情報の発信です。環境対応や地域社会との連携、
従業員への取り組みなど、財務諸表には表れにくい価値が市場
で注目されています。オールドビジネスだからこそ持つ「長年
の取引基盤」や「地域との結びつき」も、立派な投資判断材料
になります。

第三に、内部統制とガバナンスの整備です。監査法人対応や社
外取締役の登用、子会社管理の透明化など、上場企業として不
可欠な仕組みづくりは避けて通れない工程です。一定の成果を
出すには時間がかかるため、早めの着手が必要です。

まとめると、オールドビジネスが上場を目指すときには、

1.安定した実績を土台に成長ストーリーを描くこと
2.非財務情報を積極的に発信すること
3.内部統制・ガバナンスを整備すること

この3つが重要なヒントになると思います。

安定した黒字や取引基盤は、すでに「信頼」という大きな資産
です。それを未来への成長物語へと昇華させることができれば、
オールドビジネスであっても上場は十分に現実的な選択肢とな
ります。

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正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

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