中小企業が持続的に成長し、財務基盤を強化するためには、
「売上至上主義」ではなく「利益重視経営」への転換が不可欠
です。特に営業利益率(営業利益÷売上高)を向上させること
は、企業体質の抜本的な強化を意味し、企業価値の向上につな
がります。現実的な目標値として営業利益率の5%向上を目指
してみませんか。

以下に、営業利益率を高めるための具体的な取り組みを、「売
上向上策」「コスト構造の見直し」「業務効率化」「ビジネス
モデル再設計」の4つの観点から整理します。

■1.高収益型の売上構成への転換

単に売上を増やすのではなく、「粗利率の高い商品・サービス」
の比率を上げることが利益率向上の近道です。

●収益性分析の徹底
商品・サービス別、顧客別、チャネル別に粗利率を分析し、不
採算分野の見直しを行います。
●高付加価値サービスの提供
例として、飲食店であれば「コース料理の導入」、製造業であ
れば「保守・メンテナンス付きの販売」、IT業であれば「サブ
スク型サポート」など、単価が高く利益率の良いメニューを開
発します。
●客層の見直しと取引先の絞り込み
値引き交渉の多い顧客を見直し、「価格ではなく価値で選ぶ顧
客」にリソースを集中します。

■2.固定費・変動費の戦略的見直し

営業利益率を高めるには、コスト構造の最適化が欠かせません。
単なる削減ではなく「戦略的コストコントロール」が重要です。

●変動費の最適化
原材料費の見直しや、仕入先の再交渉、共同仕入れなどで単価
を抑えます。
●固定費の柔軟化
オフィス賃料の見直し、非稼働スペースの削減、アウトソーシ
ングの活用で、固定費を変動費化する工夫を行います。
●人件費の最適配置
単に削減ではなく、「一人当たりの粗利益額」を見直し、高生
産性人材への再配置や多能工化、パート・業務委託の活用を検
討します。

■3.デジタル化と業務効率化による生産性向上

営業利益率は、「同じ売上でも少ない工数で回す」ことで劇的
に改善できます。以下は即効性のある施策です。

●業務の標準化・マニュアル化
業務属人化を防ぎ、品質とスピードを平準化します。
●クラウドサービス活用
会計、給与、請求、勤怠など、定型業務はクラウドツールに移
行し、人件費とミスの削減を図ります。
●営業活動の効率化
顧客管理(CRM)や見積・受注管理のツール導入により、案
件獲得~クロージングの工数を削減し、営業1人あたりの受注
額を高めます。

■4.ビジネスモデルの再設計と利益構造の革新

既存の事業の延長ではなく、「利益の出る仕組み」そのものを
見直すことも、利益率向上の本質的な打ち手です。

●BtoBからBtoC展開へ
中間マージンを省いた直販モデルに転換し、利益率を上げる
(例:工場直販、ECの活用)。
●サブスクリプションモデルへの移行
単発売上から、毎月安定した収益を生む継続課金型へシフトす
ることで、利益構造を安定化。
●規模の追求から利益の追求へ
あえて「規模を追わずに、利益を重視する選択」を取ることで、
資源を効率的に配分します。

■「利益=企業の筋力」である

営業利益率の改善は、単なる財務数値の問題ではなく、企業の
競争力・成長性・継続性のバロメーターです。多くの中小企業
では、「売上さえ上がればなんとかなる」という考えが根強い
ですが、実際は「売上が上がっても利益が残らない」構造に陥
りやすいのが実情です。だからこそ、営業利益率5%の向上を
経営の最重要課題として掲げ、売上構成、コスト構造、業務オ
ペレーション、ビジネスモデルのすべてを見直すべきです。

その第一歩は、現状の数字を正しく把握し、利益の出ていない
部門・商品・取引を見つめ直す「経営の見える化」です。「利
益を残す経営」こそが、賃上げ、設備投資、資金繰り、事業承
継といった中小企業の経営課題すべての土台になるはずです。

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