「金利や融資枠は銀行が決めるものだから動かせない」と思っ
ていませんでしょうか。確かに正式な内部格付(リスクランク)
は、年1回、決算書をもとに更新されるのが原則です。しかし
実務の現場では、月次の数字と対話次第で“暫定的な先行修正”
が行われるケースも少なくありません。今回はその仕組みと、
銀行ごとの違いに注意しながら活用するポイントをまとめます。
1.銀行が月次で見る5つの指標
・自己資本比率
・営業キャッシュフロー
・売上総利益率
・有利子負債/EBITDA
・借入金依存度
これらを月次試算表で示し、改善の軌跡を共有することで「債
務者ランク改善の兆しあり」と営業店が本部に報告しやすくな
ります。
2.資金繰り表に載せる3つの「日数」
・売掛金回収サイト
・買掛金支払サイト
・在庫回転日数
資金の安定度を日数で可視化すると、非財務評価でプラス材料
になります。
3.事例(地方銀行で確認した複数ケースをモデル化)
製造業A社は、毎月月次レポートを提出。3か月連続で営業
CFが黒字化し、有利子負債/EBITDAが5.2→4.8倍へ改善し
たタイミングで、営業店裁量により金利が年0.3%先行引き下
げ。決算確定後、本部審査で正式に1ランクアップし、条件が
恒久化されました。
※内部格付の階級・先行修正の裁量は金融機関ごとに異なりま
す。本事例は一例であり、具体的な金利や改善幅は取引銀行で
ご確認ください。
4.金融機関別の大まかな傾向
・地方銀行:営業店判断で動く例があり、先行金利修正は
年▲0.2~0.4%程度。
・信用金庫・信用組合:店舗裁量が大きく、先行金利修正は
年▲0.1~0.3%程度。
・メガバンク:本部集中管理でハードルが高く、先行金利修正
は年▲0.05~0.2%程度。
5.提出サイクル&対話術チェックリスト
・月次締めは翌月10日以内
・レポートは「ワンシート+注記」
・改善策の実行状況を3行程度で記載
・四半期ごとに担当者と面談し、数字の裏付けを説明
正式格付は年1回でも、月次レポートは「期中の暫定評価」の
材料になります。数カ月続く改善を数字と言葉で示せば、金利
や枠が前倒しで緩和される可能性があります。ただし運用ルー
ルは銀行ごとに異なるため、必ず取引銀行に確認をしてくださ
い。