ダイナミックプライシング(動的価格設定)は、需要と供給に
基づいて価格をリアルタイムで変動させる価格戦略です。ホテ
ルの予約サイトで、日々変動する価格を見ても違和感を持つ方
は少ないでしょう。ツアー旅行の出発日毎の変動料金について
も同様です。繁閑の差の大きい事業体には有効な戦略です。
■ダイナミックプライシングに関するいくつかの業界での実践
例を紹介します。
◆1.航空業界
航空業界では、需要の変動に基づいて航空券の価格がリアルタ
イムで変動します。例えば、休暇シーズンや連休前には、需要
が高まるため価格が上がります。一方、需要が低い時期や日に
は、価格が下がります。これにより、航空会社は利益を最大化
しつつ、座席の空きを最小限に抑えています。
◆2.ホテル業界
ホテル業界でも同様に、需要に応じて宿泊料金が変動します。
大きなイベントが開催される地域のホテルでは、イベント期間
中に料金が上がることが一般的です。また、オフシーズンには
割引料金を設定して客室の稼働率を保つ戦略が取られます。
◆3.エンターテイメント業界(映画館やイベント)
映画館では、公開初日や週末にはチケット価格が高くなること
がありますが、平日の昼間などのオフピークタイムには割引価
格で提供されることがあります。また、コンサートやスポーツ
イベントなどでは、人気が高まるにつれてチケット価格が上昇
することが一般的です。
◆4.小売業界
小売業界では、特にオンラインショッピングにおいてダイナミ
ックプライシングが広く利用されています。需要の変動や競合
他社の価格、在庫状況に基づいて、商品の価格が頻繁に調整さ
れます。例えば、Amazonは数分ごとに価格を更新することで
知られています。
◆5.交通業界(ライドシェア)
UberやLyftなどのライドシェアサービスでは、「サージプライ
シング」と呼ばれる手法が用いられます。これは、需要が供給
を上回る時間帯や地域で料金が自動的に上がるシステムです。
例えば、雨が降っている時やイベント終了後などに需要が高ま
ると、料金が増加します。
これらの事例からもわかるように、ダイナミックプライシング
はさまざまな業界で異なる形で利用されており、それぞれのビ
ジネスモデルや市場環境に応じた戦略が展開されています。ダ
イナミックプライシングは有効な戦略ですが、その導入と運用
には慎重な計画と適切なリソースが必要です。中小企業では、
これらの要素をバランス良く考慮することが成功の鍵となりま
す。
■中小企業が導入する際のメリット、デメリット、そして注意
点を以下にまとめます。
◆メリット
1.収益最大化
需要が高い時に価格を上げることで、利益を最大限に引き出す
ことが可能です。
2.在庫管理の最適化
低需要時に価格を下げることで、在庫を効率的に管理し、売上
を安定させることができます。
3.市場競争力の向上
市場の価格変動に素早く対応することが可能で、競争上の優位
性を保つことができます。
◆デメリット
1.顧客の不満
価格が頻繁に変動すると、顧客が混乱したり不満を持ったりす
ることがあります。特に常連客からの信頼を損ねるリスクがあ
ります。
2.複雑な価格設定システムの必要性
効果的なダイナミックプライシングを行うためには、高度なデ
ータ分析と柔軟な価格設定システムが必要です。
3.市場の不安定化
競争が激しい市場では、価格戦争を引き起こすことがあり、結
果として業界全体の利益が減少する可能性があります。
◎自社の経営に取り込めないか?ご検討ください。