中小企業経営者にとって、銀行からの借入は重要な資金調達手
段です。しかし、多くの経営者が金利にこだわりすぎるあまり、
事業成長の機会を逃している可能性があります。本コラムでは、
金利にこだわることのデメリット、WACC(加重平均資本コス
ト)とROIC(投下資本利益率)の観点から、積極的な借入と
投資の重要性について解説します。
■ 金利へのこだわりがもたらすデメリット
金利にこだわりすぎることで、以下のようなデメリットが生じ
る可能性があります。
・銀行との関係悪化:過度な金利交渉は、長期的なパートナー
シップ構築の妨げになります。
・融資機会の喪失:低金利にこだわるあまり、必要な資金調達
の機会を逃す可能性があります。
・成長機会の見逃し:有望な投資案件があっても、金利が高い
という理由で見送ってしまうかもしれません。
■ WACCとROICの重要性
経営者が注目すべきは、単なる借入金利ではなく、WACCと
ROICの関係です。
・WACC(加重平均資本コスト):
企業が資金調達に要する平均的なコスト
・ROIC(投下資本利益率):
投資した資本に対する収益性を示す指標
WACCがROICを下回っている状況では、借入を行って投資する
ことで企業価値を高められる可能性が高くなります。つまり、
資金調達のコストよりも高い収益率が見込める投資機会がある
場合、積極的に借入を行うべきと考えます。
■ 成長志向の経営戦略
中小企業の本来の目的は事業の成長です。金利にこだわるより
も、以下の点に注力することが重要です。
・投資機会の発掘:市場動向を分析し、高いROICが見込める
投資案件を積極的に探索します。
・資金の有効活用:調達した資金を効率的に運用し、事業拡大
や競争力強化につなげます。
・長期的視点:一時的な金利の高低ではなく、中長期的な成長
戦略に基づいた投資判断を行います。
中小企業の経営者は、金利にこだわりすぎることなく、WACC
とROICの関係を重視した財務戦略を採用すべきです。事業成長
の機会を逃さず、積極的な投資を行うことで、企業価値の向上
と持続的な成長を実現できます。同時に、銀行との良好な関係
を構築し、戦略的パートナーシップを通じて、より強固な経営
基盤を築くことが重要です。金利は確かに考慮すべき要素の一
つですが、それ以上に重要なのは、借入を通じていかに事業を
成長させ、競争力を高めていくかという長期的視点です。