…前回号の続きです。日本の生産性は先進国で最下位レベル、
また、低生産性の原因は、現場の問題ではなく、概ね経営の問
題であることに前回号で言及しました。繰り返します、低生産
性の原因は概ね経営者の責任です。

以下、低生産性の改善のための重要な仮説と対策を提唱します。

■仮説1:

「…日本の企業は顧客の声を聞きすぎる。顧客の過度な要望へ
の対応は、企業を疲弊させ、低生産性の元凶になっている。顧
客を神さまと勘違いして、過剰な対応を行うということは、一
方で、自社の経営と従業員を疲弊させることになる。顧客に提
供するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが、国
全体として崩れてしまっていることが、日本の生産性を著しく
低くしてしまった。…」

◆対策1:「顧客はだれか?」顧客の定義・選別が重要です。

◎顧客をないがしろにしても良いとの意味ではありません。お
客様第一、この発想こそビジネスの礎です。問題なのは、顧客
の定義が曖昧なことです。全員が顧客だ、との間違えた思い込
みです。

〔わかり易いので飲食店の例で…〕
○高級なフレンチレストランではミネラルウォーターも高価で
す。「水がなぜこんなに高い?」との疑問を呈する人は顧客で
はありません。ただし、この高価なミネラルウォーターは、立
派なグラスで丁寧に提供されなければなりません。
○一方、大衆店で、おいしい水を立派なグラスで提供してもら
おうと考える人も、この大衆店の顧客ではありません。

◎顧客を定義するためには、提供するサービスを明確に定義す
る必要があります。

〔わかり易いので飲食店の例で…〕
○当社は高級なフレンチレストランを経営するので料金は高い、
お水はミネラルウォーターを立派なグラスで(有料で)提供す
る。ミネラルウォーターが高いという人は当社の顧客ではない。
○当社は大衆店を経営するので価格はリーズナブル、その分顧
客の細かい要望にはお応えできない。

上記を明確にしないまま、お客様第一主義を突き詰めると、そ
のツケはすべて自社に、自社の従業員に跳ね返ってきます。

◎営業時間の問題も、個別対応の問題も同じです。
顧客が望むから(推測も含めて)営業時間を延長する、顧客が
要望するから(推測も含めて)個別対応を行う…これらを収益
上の検証も行わず、その多くを顧客満足度の向上との安直な発
想で取り入れ続けた結果が、生産性の低下を招いています。

◎もはや精神論と根性論だけでは解決できません。
成熟著しい日本の市場においては、すべての事業体が、自社が
定義した顧客(のみ)に対して、自社が定義したサービスや商
品(のみ)を、生産性の整合性を担保した上で提供していく方
針に舵を切らねばならないようです。
1.自社の顧客に対してのみ顧客第一主義を貫く。
2.自社が定義したサービスや商品のみを提供する。
さらに、これらの収益上の整合性を確保することも必要です。

■『時短と生産性の向上』のためには…

1.顧客の選別(絞り込み・単純化)
2.商品・サービスの明確化(絞り込み・単純化)
3.価格の改定(値上げ)
4.営業時間の見直し(短縮)
今の日本は、好むか好まない、できるかできないではなく、こ
れらの選択肢を排除できない、切羽詰まった岐路に立たされて
いるように思います。

繰り返しますが…
「…日本の企業は顧客の声を聞きすぎる。顧客の過度な要望へ
の対応は、企業を疲弊させ、低生産性の元凶になっている。顧
客を神さまと勘違いして、過剰な対応を行うということは、一
方で、自社の経営と従業員を疲弊させることになる。顧客に提
供するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが、国
全体として崩れてしまっていることが、日本の生産性を著しく
低くしてしまった。…」
この機会にご一考いただければ幸いです。

中小企業における財務の強化方法についてシリーズでお伝えし
ております。第1回目は、「試算表」を作成することの重要性
を、続く第2回目は、「資金繰り表」を作成することの重要性
をお伝えしました。3回目となる今回は、「中小企業が実践す
べき財務戦略」について解説致します。

試算表や資金繰り表は、それ自体は単なるデータであり、財務
に関する明確な指針を持って初めて価値あるものに変わります。
弊所では、「手元キャッシュをより多く持つ」ことを、中小企
業の財務指針として推奨しています。

手元キャッシュを厚くする主な理由は、「キャッシュが切れな
い限り倒産することはない。」、「キャッシュに余裕があれば
不測の事態が起きても落ち着いて対処できる。」「キャッシュ
があれば千載一遇のビジネスチャンスを逃さない。」ためです。
経営の目的を達成するために、キャッシュは絶対に欠かせない
要素のひとつです。

しかし、「元々潤沢な自己資金を持っている。」もしくは、
「毎月キャッシュが余るほどの大きな利益を上げている。」の
でなければ、そう簡単に手元キャッシュを厚くすることはでき
ません。手元キャッシュを増やす最も現実的な方法は、「借入
を最大限活用する。」ことです。

借入を嫌う経営者も多いですが、そこには、困った時だけ金融
機関に頼れば良いという錯覚があります。金融機関はこちらの
都合で融資をしてくれません。不測の事態が起きた時、千載一
遇のビジネスチャンスに出会った時に、都合よく融資を受けら
れるとは限らないのです。

中小企業の金融機関との正しいお付き合いの仕方は、自社のタ
イミングで融資を受けにいくのではなく、金融機関側のタイミ
ングで融資を受けて手元にキャッシュを置いておき、必要な時
にそのキャッシュを使うというのが正解です。今すぐ必要でな
い資金を借りるデメリットは余分な金利を払うことですが、い
ざという時に融資を受けられないリスクに比べれば小さな問題
です。借入が増えると財務内容が悪くなると考える方もいらっ
しゃいますが、借入と同時にキャッシュも増えますので、実質
的な借入額が増える訳ではありません。

「借入を活用してでも手元キャッシュをより多く持つ。」こと
の重要性にご賛同いただけたならば、次は、「どうすれば金融
機関から最大限の融資を受けられるか。」という課題にお気づ
きになるのではないでしょうか。金融機関から最大限の融資を
受けるためには、自社の財務状況を定期的に金融機関に開示し、
融資が可能であれば、いつでも提案を持ってきてもらえる関係
を構築する必要があります。

試算表や資金繰り表は金融機関とのコミュニケーションツール
です。試算表や資金繰り表の提出なしに金融機関と円滑な関係
を構築することは出来ませんので、まずは、毎月しっかりと作
成しましょう。さらに、「キャッシュをより多く持つ。」とい
う財務指針も金融機関と共有出来れば、財務はより強固なもの
になります。

■日本の生産性は著しく低く、先進国の中では最下位レベルで
す。

◆2017年、日本の生産性に関する主要なデータは以下です。
1.日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟36カ国中20位。
2.日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たり付加価値)は
OECD加盟36カ国中21位。
3.同年の日本の時間当たり実質労働生産性上昇率は+0.5%。

※公益財団法人日本生産性本部『日本の労働生産性の動向2018』
からの引用です。
○「2017年度の日本の時間当たり労働生産性は47.5ドルで、
OECD加盟36カ国中20位。OECDデータに基づく2017年の日
本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、
47.5ドル (4,733円/購買力平価(PPP)換算)。米国(72.0ドル
/7,169円) の3分の2程度の水準に相当し、順位はOECD加盟
36カ国中20位だった。名目ベースでみると、前年から1.4%
上昇したものの、順位に変動はなかった。主要先進7カ国でみ
ると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続い
ている。」
○2017年度の時間当たり実質労働生産性上昇率は+0.5%。
上昇率は2015年度から3年連続でプラスとなったものの、前
年(+1.0%)より0.5%ポイント落ち込んでいる。実質経済成
長率(+1.6%)がプラスであったことや労働時間の短縮(-0.2
%)が労働生産性を引き上げたものの、生産性低下要因となる
就業者の増加 (+1.4%)が1995年以降で最も高い水準となっ
たことが影響した。
○2017年の日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たり付加
価値)は、84,027ドル(837万円)。ニュージーランド(76,105
ドル/758万円)を上回るものの、英国(89,674ドル/893万
円)やカナダ(93,093ドル/927万円)といった国をやや下回る
水準で、順位でみるとOECD加盟36カ国中21位となっている。」

■低生産性の原因と対策は…

◆低生産性は現場の問題ではなく、マネージメント(経営)の
問題です。
低生産性の解決策を、個人の仕事のスピードアップや業務効率
の改善に求めるのではなく、会社全体のシステムの問題として
とらえるべきでしょう。低生産性の原因は、現場ではなくマネ
ージメントの問題です。この認識が必要です。

◆生産性向上のための対策は…

1.ビジネスモデルを転換する、効果は◎です。
容易ではありませんが、より単純(Simple)で高収益(Profi
table)なビジネスモデルに転換出来れば、その生産性は格段
に向上します。これこそ社長の仕事です。惜しみない勉強が
必要です。

2.業務を減らす、効果は○です。
仕事を棚卸してください。思い切って業務を20%やめましょう。
業務を減らせば仕事は減ります。業務を減らすためには、業務
そのものを棚卸するだけでなく、過剰な品質になっていないか
どうか、業務内容も検討してください。業務が過剰品質になっ
ているケースも少なくありません。
※やめることを探してください。上手にやろうとするのではな
く、思い切ってやめる、この決断が必要です。

3.その他、あらゆるものを減らす、効果は○です。
提供するサービスや商品、不採算顧客等、あらゆるものを棚卸
する必要があります。聖域を設けずにあらゆるものを対象にし
て、選別して減らすことを考えてみましょう。
※不要なモノがたくさん混在しています。悪の根源はこれらの
不要なモノです。

4.値上げする、効果は○です。
単価を5%上げることができれば、生産性は5%向上します。
一律の値上げは乱暴ですが、不採算商品や不採算顧客に対する
値上げは有効です。減収の覚悟も必要ですが、案外値上げが通
ることもあります。重い判断になりますが、選択肢として排除
すべきではありません。

5.過度なサービスをやめる、効果は○です。
メニュー表にない+αのサービスを、しかも無償で担当者が提
供し続けているケースは少なくありません。これも棚卸して顕
在化させてください。サービスの必要性を担当者個人の裁量に
委ねるのではなく、経営として判断してください。必要なら正
式に行う、不要なら会社としてやめる…判断してください。
※無償サービスを会社として容認し続けるロスは、担当者個人
の負担として、その担当者を直撃します。退職につながるケー
スが多いです。

6.生産性を管理する、効果は○です。
部門ごと、出来れば担当者ごとに、その生産性を把握できる指
標を設けて管理してください。部門、出来れば担当者ごとの実
績を把握し、目標を決めて、継続的に管理することは大変有効
です。
※担当者個人を責めるための管理ではありません。生産性を改
善させるため・個人の負担を軽減させるための管理です。

7.業務のスピードを上げる、効果は△です。
同じことを10%早くやれば、確かに生産性は10%向上します。
確かに重要ですが、精神論・根性論に終焉しがちです。マネー
ジメントとしての対策(上記の1~6)を進めながら、並行し
て取り組んでください。

◎1~6はすべてマネージメント(経営)の問題です。低生産
性の原因は、現場の問題ではなく、すべて経営の問題なのです。

前回のメールマガジンでは、財務管理の強化は試算表の作成か
ら始まることをお伝えしました。しかし、試算表だけ作成すれ
ば十分かと問われると、そうではありません。試算表にはキャ
ッシュベースの収支が分からないというウィークポイントがあ
ります。

赤字になっても即倒産はしませんが、資金が底をつくと黒字で
も倒産します。そういう意味では、利益管理よりも資金繰り管
理の方が重要です。そして、資金繰りの管理を行うツールが
「資金繰り表」になります。資金繰り表は、毎月の入金額と支
出額を項目ごとにまとめた単純な表ですが、財務管理にとても
役立ちます。

殆どの社長様が何らかの資金繰り表を作成していると思います。
実際に表を作成していなくても、頭の中にはおおよその入金額
と支出額が入っているはずです。ただ、残念なことに、今月も
しくは来月、といった短い期間の資金繰り状況しか把握できて
いないのが実態ではないでしょうか。

短期間の資金繰り計画しか立てていないと、「お金が足りない
!」という事態が1か月ほど前にしか分からないということに
なります。1か月という時間は、資金調達を行うにあたり決し
て十分な時間ではありません。経営者としての他の大切な業務
を削ってでも資金調達に走り回らなくてはならなくなります。
行き当たりばったりの財務活動です。

計画的に財務活動を行うために実践していただきたいのは、向
こう1年間の「資金繰り計画」の作成です。1年程度先までの
資金繰り計画を立て、資金の流れを予測しながら、資金調達や
設備投資の計画を立てます。1年先の売上など分からないとい
う声もお聞きしますが、向こう1年間の「資金繰り計画」とあ
わせて、過去1年間の「資金繰り実績」も作成してみてくださ
い。過去の売上の動きから未来の売上の動きを何となく予測す
ることができるかもしれません。

財務管理の最大の目的は、「資金を切らさないこと」です。試
算表で利益を管理しながら、自社の資金調達力を高め、資金繰
り計画を立てて計画的に資金調達や設備投資を行えば、資金に
慌てることなく落ち着いて経営に専念できます。

本年度の経営指針を確認してください。

大変不透明な時代が続きます。
経済や政治動向などを正確に予測できる人はいません。それだ
け世の中が複雑で難解な時代になってしまったのでしょうか。
一方、それらの動きに一喜一憂するよりも、自社の経営につい
て、しっかりと考え続けましょう。本年も、皆さま方のお役に
立てそうな情報を提供させていただきます。少しでも、貴社の
経営に役立てば幸いです。

年初に当たって、もう一度、経営の基本指針について言及させ
ていただきます。一つの考え方としてご確認ください。

◆1.単純(Simple)な経営を目指してください。
…分散してはいけません。複雑にしてはいけません。絞り込ん
で単純に仕上げてください。

ビジネスモデルはできるだけ単純にしましょう。事業体の仕組
み自体も単純になります。集中できて強くなります。業務が効
率的になり、ミスも減ります。高品質のサービス・商品を生み
出し、高い収益力を持つことができます。分散と複雑化は、経
営における諸悪の根源です。

◆2.高収益(Profitable)な企業作りを目指してください。
…安売りは絶対にNGです。経営の難易度を著しく高め、かつ、
創造力を奪います。

売れた時には、大きな利益を出せる収益構造を当初から設計し
ましょう。高めの粗利益率の設定、高めの値付けを心掛けてく
ださい。値決めを外すなら高めに外してください。ビジネスと
して完成した時点での営業利益率は20%以上で設計してくだ
さい。安売り戦略は、経営の難易度を高め、事業体の創造力を
奪い去る原因になります。

◆3.手持ち資金を潤沢(Ample)に維持してください。
…資金余力は企業経営の余裕代、時間を提供してくれます。
財務機能を持ってください。

資金は可能な限り潤沢に持ち続けましょう。借入れの金利負担
よりも、資金に困るリスクの方がはるかに深刻であることを認
識してください。また、借入れのタイミングは、自社が資金を
必要とするタイミング(借り手の都合)ではなく、金融機関が
融資できるタイミング(貸し手の論理)に沿うことが重要です。
総じて貸し手の方が強いからです。資金余力がもたらす経営者
の心の余裕と、増加分の金利負担を、天秤にかけて比較してく
ださい。

◆4.変化に対応できる柔軟性(Flexible)のある企業体を維
持してください。
…計画のずれを想定した経営を行ってください。

計画(売上の達成)が遅れることを想定しながら経営してくだ
さい。「コントロールできない売上を、コントロールできる売
上以外の経費の執行で調整する」、これが経営管理です。経費
の執行をワンテンポ遅らせる…これが不透明な時代に、企業体
力が十分でない事業体が選択すべき経営のコツです。また、遅
れを許容するための資金余力を持てる財務戦略が重要です。

◆5.経営判断を明確(Clearly)にしてください。
…感覚に頼らず、数字を基準にした論理的な経営を行ってくだ
さい。

曖昧な経営判断、お人好しな対応を止めましょう。経営は、感
覚や概念ではなく、数字で管理してください。感覚や概念を基
準に考えると、判断が曖昧になりがちです。数字基準での判断
は、その判断の精度を各段に向上させます。経営が締まります。

経営の判断基準は何か?永遠のテーマです。経営の判断基準は
無限にあります。逆にも真あり、敢えて真逆を攻めることで成
功することもあります。それでも、王道をお薦めいたします。
王道とは、多くの偉人が語り続けた経営の道です。上記の方針
は、偉人が語る経営の道に近似しているはずです。当然です、
偉人の言葉を借りているからです。経営者の皆さま方が、理詰
めで考えて、腑に落ちた部分については、今後の指針として、
深く、深く…心に刻んでください。

上記の5つの指針【SP経営5大指針】を前提にして、以下の
事柄に取り組んでください。

◆6.事業立地の確認・見直しを行ってください。

事業の収益性を決める要素はたくさんありますが、最も重要な
のは、事業立地(ポジショニング)を含むビジネスモデルであ
って、マネージメントやマーケティングではありません。
「STARの法則」(ダイレクト出版)の著者であるリチャード・
コッチ氏は、その著書の中で『覚えておきたいのは、「一にも、
二にも、三にも人」ではない。一貫してうまくいく有効な解答は、
「一にも、二にも、三にもポジショニング」だ。』と明言され
ています。

◆7.ビジネスの型の確認・見直しを行ってください。

多くの中小企業は、事業の拡大を狙ってプロダクト型からスト
ア型に移行する時に、その商品やサービスの幅を広げます。
しかし、その幅の拡大が売上の増大に比して大きいため、その
生産性を著しく引き下げる結果を招きます。繁盛貧乏に陥りま
す。そして、この状態で停滞しています。『選択と集中』とは、
ストア型をプロダクト型に戻すことです。プロダクト型の企業
は、ストア型に移行せず、プラットフォームの構築を狙うべき
との持論を持っています。受注型はプロダクト型へ、ストア型
もプロダクト型へ、プロダクト型はプラットフォームの構築を
狙ってください。プラットフォームを構築できたら金融事業に
参入しましょう。これが王道です。

殆どの中小企業が財務管理に改善の余地があると感じます。財
務管理が弱いと、自社の財務状況を金融機関に正確かつタイム
リーに伝えられないため、本来融資を受けられる業績であって
も、融資を断られる場合があります。融資をスムーズに受けら
れなければ、成長の機会を逃したり、資金が詰まるという危機
に瀕したりしますので、財務管理は強い方が安心です。

財務管理強化の第一歩はどんぶり勘定から脱却することです。
通帳の残高を見ながら感覚的に経営するのではなく、財務数値
に基づいて経営判断を行った方が、より正確な経営判断を下す
ことができます。正確な財務数値を把握するために、まずは月
次試算表の作成から始めましょう。試算表を見れば、キャッシ
ュの動きだけでは分からない「利益」と「資産・負債」の状況
が分かります。

どんぶり勘定が引き起こす代表的な事例は以下となります。

■ 実は赤字だが資金繰りが回っているため気がつかない。
本当は赤字に気づいているのかもしれませんが、赤字を直視し
ないことによって対策が遅れます。赤字を改善する努力よりも、
借入で資金繰りをごまかすことを優先し続けると、必ず最後に
資金が行き詰ります。

■ 無駄な資金繰りに時間を費やしている。
取引条件によっては黒字でも資金繰りが苦しくなります。黒字
ですので融資を容易に受けることができ、資金繰りの苦労から
も簡単に解放されますが、それに気づかず資金繰りに多大な労
力をかけています。

■ 融資を受けられるタイミングを逃している。
本当によくあるケースですが、6か月前なら融資を受けられた
というケースです。融資はいつでも受けられる訳ではありませ
んので、財務状況をタイムリーに管理し、一番借りやすい時に
借りておくのが鉄則です。資金が必要なのに融資を断られて困
っている企業様の半数は、過去に資金調達のタイミングを逃し
ています。

他にもたくさん事例はございますが、お伝えしたいのは、「試
算表」を毎月作成することの重要性です。試算表は、あらゆる
財務的な判断を下す根拠となるものですので、財務管理を強化
するための第一歩として、試算表を毎月作成することからスタ
ートしてください。

○銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、
『貴社の財務部長代行』を廉価でお引き受けいたします。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所である当事務所にて承っております。
お気軽にご相談ください。

○音声・パワーポイントレジュメ付の誌上無料セミナー(20分)
をご視聴ください。
【創業~中小零細企業経営者が押さえておくべき銀行取引の
基本ルール10!と3つの事例!】
…借り手の論理ではなく貸し手の論理で!
雨傘理論ではなく日傘理論で!

■お問い合わせ先
【 吉川和良税理士事務所 yoshikawa@mas-cpta.com 】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ お役立ち情報
『65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)
について』
…50歳以上の有期契約労働者を無期雇用に転換する場合に
活用できる助成金です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する場合に活用できる
助成金としては「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」
が一般的ですが、50歳以上で定年年齢未満の有期契約労働者
を無期雇用労働者に転換させる場合は「65歳超雇用推進助成
金(高年齢者無期雇用転換コース)」を活用するほうが助成金
額が多くなります。

概要をみておきましょう。

■対象となる事業主
主な要件は以下のとおりです。
(1)雇用保険適用事業所の事業主であること。
(2)無期雇用転換計画書提出日から起算して1年前の日から
支給申請日の前日までの間に、高年齢者雇用安定法第8
条または第9条第1項の規定に違反していないこと。
※60歳以上の定年あるいは希望者全員を対象とした65歳ま
で継続雇用制度を定めていることが要件になります。
(3)有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する制度を就業
規則等に規定すること。
(4)次のような高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実
施していること。
・職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等
・作業施設・方法の改善
・健康管理、安全衛生の配慮
・職域の拡大
・知識、経験等を活用できる配置、処遇の改善
・賃金体系の見直し
・勤務時間制度の弾力化
(5)当該労働者を、無期雇用労働者に転換した日以降の期間
について雇用保険被保険者としていること。

■対象労働者
(1)転換日において雇用期間が通算6か月以上であること。
(2)50歳以上で定年年齢未満の有期契約労働者であること。
(3)転換日において64歳以上の者でないこと。

■支給額
1支給年度1適用事業所あたり10人までを上限として、以下
の金額が支給されます。( )内は中小企業以外の場合です。
・対象労働者1人につき48万円(38万円)
・生産性要件を満たす場合は60万円(48万円)
※キャリアアップ助成金(正社員化コース)の場合は、
・対象労働者1人につき28.5万円(21.375万円)
・生産性要件を満たす場合は36万円(27万円)
となります。
詳しくは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のホ
ームページをご確認ください。
http://www.jeed.or.jp/elderly/subsidy/subsidy_h30muki.html

いよいよ年の瀬です。
一年を締めくくり、良い新年をお迎えください。

■一年という時間は、長くもあり、短くもあり、頃合いの時間
です。大きな何かを成し遂げるには短過ぎます。一方、真剣に
取り組めば、相当のことが出来る時間です。ひとつのステージ
に目途を付けるのに頃合いの長さです。

○年初に何かを決めたとしましょう。一生懸命に取り組めば、
年末には何か手応えを実感できるはずです。
○さらに、翌年には次のステージを目指してスタートします。
年末には、確かな実感を感じ取れるでしょう。
○そして、三年目には、成果の断片を手中にできるでしょう。
○これを十年続けることが出来たなら、大きな功績を残せるは
ずです。

■一ヶ月という時間は、長くもあり、短くもあり、頃合いの時
間です。大きな何かを成し遂げることはできませんが、仮説と
検証をワンサイクル以上回せる時間です。仮説をランクアップ
させるのに頃合いの長さです。

○月始めに立てた仮説を実行に移して、月末には結果を検証し
ます。
○仮説と検証のワンサイクル(デミングサークル)を一巡でき
ます。
○これを十二回回せる期間が一年です。一年という時間は、相
当な時間です。

■一年を総括してみましょう。

○まず総括が重要です。
・今年一年の軌跡を振り返りましょう。どんな風に考えて、ど
んな風に行動し、その結果どうなったのかを丁寧に整理してく
ださい。
・良かった点、改善すべき点を洗い出し、来年の指針にしまし
ょう。

○総括が十分でなければ、同じ過ちを繰り返します。
・人は間違えます。しかし、間違えから学ぶことが出来れば、
それは成功の糧になります。一方、間違えを総括できなければ、
間違えを繰り返します。
・間違えを、確実に「糧」にしましょう。

○年初に立てた今年一年の目標を思い出してください。
・そもそも明確な目標を持っていなければ、来年は、明確な目
標を持ってみませんか。目標を置けば、その目標がより明確で
あればあるほど、実現の可能性は高くなります。目標作りから
始めてください。
・年初目標の達成率が低ければ、そもそも目標が明確であった
かどうかを検証してください。来年の目標は、より明確に描い
てください。また、目標の進捗確認が出来ていましたか。年初
の目標は、出来れば一ヶ月毎、最低でも三ヶ月毎の進捗確認と
修正が必要です。
・目標の達成率が高ければ、来年は、もっと大きな、届きそう
もない目標を立ててみませんか。自分を過小評価せず、自分の
潜在能力を引き出すぐらいの目標を立案してください。

■いずれにしても、前向きに考えましょう。

〇今年あった良くないことに焦点を当てて悔やむのを止めまし
ょう。どうせなら、今年あった良いことだけを取り出して喜び
ましょう。
〇むかついた相手のことを思い出して恨むのはよしましょう。
どうせなら、良くしてくれた人を思い出して感謝しましょう。
〇うまく行かなかったビジネスシーンを嘆くのもやめましょう。
どうせなら、成功した体験を記憶から取り出しましょう。
〇人は考え方次第でその人生が変わります。
恨み・憎しみ・後悔・嘆き…このようなネガティブな言葉は、
除夜の鐘と共に記憶から消し去りましょう。
愛・感謝・喜び・笑顔…来年からはポジティブな言葉とだけ付
き合っていきましょう。

◆来年はもっと積極的に生きましょう。
◆来年はもっと明るく笑顔で生きましょう。
◆来年はもっと感謝して生きましょう。
◆来年はもっとビジネスを成功させましょう。
◆そして、来年はもっともっと幸せになりましょう。
◆こんなことを自身が考え、そして、こんなことを考えている
人達とお付き合いしましょう。
こんな決意と共に新しい年を迎えてください。

一年間お世話になりました。感謝・合掌。

金融機関は「決算書」を拠り所に融資審査を行います。中小企
業の場合、税理士事務所が税務目線で作ることが多い決算書で
すが、金融機関は税務署ではありませんので、「税金が正しく
計算されているか。」ではなく、「貸したお金が本当に返って
くるか。」という目線で見ています。よって、税務上は正しい
決算書であっても、提出された決算書をそのまま分析するので
はなく財務の目線で修正しています。

下記にセルフチェックの手順をご紹介します。すべての金融機
関が必ず下記の手順で診断している訳ではありませんが、基本
的な考え方としてご了承願います。

1.損益計算書の修正および診断

◆ 減価償却不足を修正します。
減価償却の未計上は税務上問題ありませんが、利益が正しく計
上されないため、財務上は必ず計上します。よって減価償却不
足がある場合、「税引き後利益-償却不足額」で利益修正を行
います。

◆ 役員報酬を修正します。
役員報酬を減らして利益を大きく計上するなど、役員報酬は利
益の調整弁になりやすい項目です。役員報酬額を過小に計上し
ている場合は、「最低限必要な生活費(※360万円程度)-
役員報酬額」を税引き後利益から差し引きます。反対に社会通
念上過大と考えられる役員報酬を得ている場合は、「役員報酬
額-生活に必要な生活費(※800万円程度)」を税引き後利
益に加算します。
※金額はイメージしやすいように例示したものです。あくまで
も参考程度とお考えください。

2.返済能力の診断(診断その1)
修正後の損益計算書を基に返済能力を診断します。企業の返済
能力は、「修正後の税引き後利益+減価償却費」で求められま
す。この値がプラスであれば第1段階の診断はクリアです。マ
イナスであればプロパー融資を受けるのは難しくなります。

3.適正借入額の診断(診断その2)
返済能力を確認したら、次は借入額が返済能力に見合っている
かを診断します。「(金融機関からの借入額-現預金)÷(税
引き後利益+減価償却費)」で求められる値が「10」未満で
あれば、新たな借入の可能性はありと判断出来ます。10以上
となった場合は、新たな借入は難しいと考えられますが、正式
な算式はさらに細かいものになりますので個別でお問い合わせ
ください。

4.貸借対照表の修正および診断

◆ 不良資産の修正
資産の中から、実際は価値の無い資産を減算していきます。例
えば、回収不能な売掛金や貸付金、不良在庫、使途不明な仮払
金などは減算の対象です。販売先が破産を申し立てた場合、税
務上は破産手続きが完了するまで資産に計上しておかなくては
なりませんが、実態は回収見込みが薄いため、財務上は減算し
なくてはなりません。

◆ 返済不要な負債の修正
社長個人からの借入金など、差し迫って返済が不要なものは負
債から減らすことが出来ます。

5.安全性の診断(診断その3)
倒産しにくい会社かどうかを、「自己資本」で判断します。こ
の場合も、修正後の貸借対照表を基に、「修正後の資産-修正
後の負債」で自己資本を算出します。損益計算書の診断結果が
良好で、この値もプラスであれば融資を受けられる可能性はさ
らに高くなります。

以上、貴社の診断結果はいかがだったでしょうか。ひとつでも
クリアできていない項目があれば財務面に問題を抱えているこ
とになりますので、お早めにご相談ください。

ビジネスの環境は常に変化しています。先進的な企業は新しい
事業立地で新しいビジネスモデルを創造し続けています。新し
いビジネスモデルを一部ご紹介します。貴社に置き換えて考え
てみてください。

■トレンドのビジネスモデル

◆1.サブスクリプション(定額)サービスモデル
サービスやモノを、定額で使い放題で利用できるビジネスの型
です。映画や書籍・マンガ・音楽などのデジタルコンテンツの
定額サービスは良く知られていますが、スーツやワイシャツな
どを定額で一定数定期的に届けてくれるサービスもあります。
売上の安定と、継続による新規顧客開拓コストの削減を狙うモ
デルですが、モノや物流の伴う事業では、物流費などのコスト
を賄えず、撤退する事業者も目立ってきました。

◎貴社の事業にあてはめて考えてください。定額制にして囲い
込んだ顧客に対して、サービスやモノを使用量のキャップを掛
けずに販売する方法はありませんか。

◆2.シェアリングビジネスモデル
物品を多くの人と共有したり、個人間で貸し借りをしたりする
際の仲介ビジネスの型です。消費者が所有に対するこだわりを
捨てた、または、あきらめた背景があるようです。乗り物、住
居、家具、服など、ありとあらゆるものが対象になりつつあり
ます。シェアリングビジネスを牽引する代表的な企業群が、ど
んどん生まれています。「民泊」や「ライドシェアリング(自
動車を相乗りする)」等は、様々な問題点も内包していますが、
その市場はできあがりつつあります。

◎貴社の事業にあてはめて考えてください。今まで販売して売
り切ってきたモノやサービスを、期間を決めて貸し出すことは
できませんか。稼働率・単価設定・資金余力がポイントです。

◆3.プラットフォームビジネスモデル
GAFA〔グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン〕
など、世界の時価総額上位企業の大半はプラットフォーム企業
です。プラットフォームとは、自社が構築した場に、多くのサ
ービス提供者を引き込んで、その場で取引を製造するメーカー
のことです。(定義は諸説ありますが。)
自前のプラットフォーム上での取引に対して金融ビジネスを付
加することも定番です。

◎貴社の事業にあてはめて考えてください。自社の提供する
サービスや商品を軸にして、他社も引き込んだ販売体制を整備
して、全体で集客効果が上がればこれも一種のプラットフォー
ムです。場代(定額又は売上歩合)がプラットフォームの収益
です。

■トレンドの言葉

◆1.リカレント教育
リカレント教育とは、基礎教育を終えて社会人になったあと、
あらためて就労に活かすための学び直しを意味します。趣味で
はなく、社会で働き続けるために役立つ学びとの意味合いが強
いように思います。本来は当たり前のことですが、社会人にな
ってから学び続ける習慣のない社会人には必要な概念なのでし
ょう。
『…自己啓発を実施した人と実施しなかった人の年収変化の差
額は、1年後には有意な差はみられないが、2年後では約10万円、
3年後では約16万円でそれぞれ有意な差がみられている。…就
職できる確率が、10~14%ポイント程度増加…』
(内閣府データより引用)
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/pdf/p02023.pdf#search=%27%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%88%E6%95%99%E8%82%B2%27

ジョギングをしている人が、していない人より早く走れるのは
当たり前の論理です。多くの社会人が理解すべきことですが。

◎貴社にあてはめて考えてください。従業員に勉強する機会を
提供できていますか。経営者から従業員への啓蒙と、その環境
整備が必要です。デジタルコンテンツなどを活用すれば廉価で
対応できます。

◆2.デジタルコンテンツ
学びをテーマにデジタルコンテンツの一例を紹介します。eラ
ーニング、オンライン講座…呼び方は多様ですが、スマホ・パ
ソコンにアクセスするだけで、様々なテーマの講座が手元で聴
講できます。繰り返して受講することも可能です。受講するた
めのコストや時間を削減できます。講師を招聘する必要もあり
ません。講師も、講座をデジタル化して配信する、一度収録す
ればどこでも・いつでも・だれでも・何度でも視てもらえます。
聴講に関する条件設定は自由です。これがデジタルコンテンツ
です。

◎貴社の事業にあてはめて考えてください。貴社の商品やサー
ビスをデジタル化して販売できませんか。また、デジタル化し
て広告できませんか。廉価でデジタル化するソリューシンはす
でに整備されています。

◎参考:銀行融資プランナー協会は、【リカレント教育・従業
員教育用eラーニング教材】を廉価でご提供できます。
お問合せください。

卸事業を行うA社様の事例です。会社の幹部に経営を引き継ぎ
たいと考えており、そのための対策が求められていました。事
業承継時に最もよくある課題は下記の2点です。

1.事業を譲り受ける方が株式の購入資金を用意できない。
2.会社の借入に対して連帯保証をすることに抵抗がある。

A社も同様に上記の課題に直面していました。資本金は
1,000万円(1,000株)ですが、幹部の方が個人的に
用意できる資金は100万円程度であり、議決権の過半数も取
れない状況です。

この問題は自己株の買い取りにより解決しました。自己株の買
い取りとは、社長が持っている株式を、会社が自ら買い取る方
法です。会社が買い取った株式は議決権を持ちませんので、社
長が保有している株式1,000株のうち、900株を会社に
900万円で売却しました。これにより、社長は900万円の
売却代金を手にしたうえで、残りの株式だけで100%の議決
権を維持できます。残った100株を幹部の方に100万円で
売却すれば、議決権の100%を引き継ぐことができます。

次に個人保証の問題です。国は、できるだけ経営者から個人保
証をとらないようにしようと「経営者保証に関するガイドライ
ン」を定めましたが、実務上は銀行も保証協会も簡単には無保
証に応じてくれません。最もこの制度に積極的に取り組んでい
るのは日本政策金融公庫です。

A社も個人保証のついた借入が3,000万円超ありましたが、
日本政策金融公庫より4,000万円の無保証借入を行うこと
ができたため、既存の金融機関とは交渉がしやすくなりました。
もちろん日本政策金融公庫は既存借入の肩代わり資金として融
資をしてくれた訳ではありませんが、交渉が難航すれば一括返
済という最終手段で対応できます。

これらの事業承継対策は短期間に行った訳ではありません。特
に自己株の買い取りは、株価の問題もあるため、複数年に分け
て行っており、自己株式の買取についても、金融機関の資金協
力があって実現しました。

事業承継時にネックとなる問題は、「資金」です。事業承継を
考えておられる経営者様は、是非ご相談ください。