『何を?』『誰に?』『いくらで?』『どのように売るのか?』、
この4つの要素の組合せがビジネスモデル(の概況)です。
創業・開業や新規事業を起こす時に、これらの4つの要素をす
べてゼロから構築する計画は大変難解です。特に、『何を?』
と『誰に?』の2要素の内の一つは、すでに持ち合わせたモノ
を利用することをお薦めします。

◆ケース1:既存の商圏から、『何を?』と『誰に(顧客)?』
を持ってくる創業は比較的容易です。

前職の会社で、自身が扱っていた商品とサービスを、一部の顧
客ごとそのまま横滑りさせて起業するケースは、初期の立ち上
げが容易です。デスバレーもほとんど作らずに、初年度から相
応の売上と黒字を出せる会社様の大半はこのケースです。ただ
し、前職の会社との折り合いがついていなければ、トラブルを
誘発する可能性もあります。注意が必要です。また、その後事
業が停滞する確率が高いのもこのケースです。そもそも既存の
商圏の一部を移転させたわけですから当然です。新たな創造が
求められます。

◆ケース2:『何を?』と『誰に?』の2要素をゼロから作る
創業は大変難解です。

商品やサービスが現存せず、顧客も持ち合わせていない状態で
の創業です。そのマーケットが相当有望であったとしても、大
きな先行投資が必要になります。デスバレーも深く長いものに
なります。ビジネスに対する知見と資金力を有する者のみが挑
戦できる創業と考えてください。頓挫する確率の高い創業です。
※ただし、これを立ち上げられる経営者は、その後の大化けが
期待できます。

◆ケース3:『何を?』を持っていて、これから『誰に?』
『いくらで?』『どのように売るのか?』を創造
する創業が一般的です。

自身の得意な『何を?』、商品やサービスを有している状態で、
顧客を創造するケースです。相応のデスバレーは存在しますが、
ケース2のデスバレーよりは、はるかに小さいはずです。
※ケース3よりはレアですが、『誰に?』を持っていて、
『何を?』を創造する創業もあります。

□『何を?』と『誰に?』を共に有する創業は…◎
□『何を?』を持ち合わせた創業は…○
□『何を?』も『誰に?』も持ち合わせていない創業は…×(難解)

大変大雑把な分類ですが、判断基準として有意性があります。

◆ケース4:『いくらで?』を高めに設定できる創業者様と、
安めに設定してしまう創業者様がいます。

□高めに設定できる創業は…○
□安めに設定する創業は…×
これも有意性があります。

◆ケース5:ITに関するリテラシーの高い創業者様と、そう
でない創業者様がいます。

□ITリテラシーの高い創業者様は…○
□ITリテラシーの低い創業者様は…×
これも有意性があります。

◆ケース6:資金力(調達力も含めて)のある創業者様と、
そうでない創業者様がいます。

□資金力(調達力も含めて)大の創業者様は…○
□資金力(調達力も含めて)小の創業者様は…×
これも有意性があります。

◎『何を?』と『誰に?』、少なくとも一つを持ち合わせ、
『高めの価格設定』で、『ITリテラシーは高く』、『資金力
(調達力も含めて)の有る』創業者様は、その成功確率が高い
ようです。

入社した時、その会社にはすでにビジネスモデルが存在し、
ある程度円滑に機能しています。新入社員は、このビジネスモ
デルに沿って、『何を?』『誰に?』『いくらで?』『どのよ
うに売るのか?』の4つの要素の一部を担います。その地位が
上がっても、その関与する範囲を拡大させるだけで、過去のビ
ジネスモデルを踏襲するケースがほとんどです。結果として、
ほとんどの人が、『何を?』『誰に?』『いくらで?』『どの
ように売るのか?』を真に創造したことがありません。
過去のビジネスを踏襲しながら改善することと、ゼロから創造
することには雲泥の差があります。創業・開業時や新規事業を
はじめる時には、肝に銘じてください。

中小企業経営承継円滑化法とは、中小企業の経営承継を円滑に
することを目的とした法律です。都道府県知事の認定を受ける
ことで、相続税・贈与税の納税猶予の特例、代表者交代による
信用不安を補完する金融支援、遺留分に関する民法の特例、を
受けることができます。

◆ 事業承継税制(特例措置)の概要
後継者が相続又は遺贈により取得した株式等に係る相続税の
100%が猶予されます。本制度の適用を受けるためには、経
営承継円滑化法に基づく都道府県知事の「認定」を受け、報告期
間中(原則として相続税の申告期限から5年間)は代表者とし
て経営を行う等の要件を満たす必要があり、その後は、後継者
が対象株式等を継続保有すること等が求められます。また、後
継者が死亡した等の一定の場合には、猶予された相続税が免除
されます。

◆ 金融支援の概要
事業承継の際に、会社や後継者である個人事業主あるいは代表
者個人が資金を必要とする場合に、日本政策金融公庫あるいは
沖縄振興開発金融公庫の低利融資制度による支援を受けること
ができます。また、事業承継に関する資金を金融機関から借り
入れる場合には、信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が用意
されます。

◆ 遺留分に関する民法の特例
推定相続人が複数いる場合、後継者に自社株式を集中して承継
させようとしても、遺留分を侵害された相続人から遺留分に相
当する財産の返還を求められた結果、自社株式が分散してしま
うなど、事業承継にとっては大きなマイナスとなる場合があり
ます。このような問題に対処するため、経営承継円滑化法は、
推定相続人全員の合意の上で、現経営者から後継者に贈与等さ
れた自社株式について、遺留分算定基礎財産から除外できたり、
又は遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定
することができます。

上記のとおり、様々な制度が用意されていますが、事業を引き
継ぐ意欲のある後継者や従業員がいたとしても、やはり、負債
や資金面で断念するケースが現実的には多いように感じます。
このようなケースにおいては、日本政策金融公庫や保証協会の
金融支援が大いに役立ちます。事業承継を考えていらっしゃる
経営者様は、是非、ご相談ください。

自動運転やライドシェアの進展によって、近未来の車の販売台
数は激減するはずです。英金融大手のバークレイズは、米国の
新車販売市場は40年までに4割縮むとの予測を示しています。
車を個人で所有するのではなく、共有されるとなると、これま
での車の概念が大きく変わります。
また、年間販売台数1,000万台を超えるトヨタ自動車の時
価総額22兆円に対して、高々数十万台しか販売していないテ
スラモーターの時価総額が5兆円、電気自動車の隆盛と、内燃
機関の没落を象徴しています。
個人所有のパーソナル市場で台数を稼ぎ、複雑難解なエンジン
の開発・生産力と、数万点以上にも及ぶ部品の調達とアッセン
ブリ―能力で、圧倒的な参入障壁を維持できた自動車メーカー
にも暗雲が立ち込めています。

トヨタ自動車の豊田社長は、「私たちの競争相手はもはや自動
車会社だけではなく、グーグルやアップル、フェイスブックの
ような会社もライバルになってくる」「様々なコネクティッド
サービスに必要な、モビリティサービスプラットフォームをつ
くる会社になる」と明言されています。
トヨタ自動車ですら、全く新しいビジネスモデルの創造を強い
られています。早期に実現できなければ、エクセレントカンパ
ニーからただの大企業に転落するのでしょう。
『make a change』、変化に対応しなければ我々も存在意義を
無くします。最も重要な経営者の仕事、いや、経営者の唯一の
仕事は、数十年後にも隆々と事業を営めるように事業を変化さ
せる、そのために学び、行動すること以外にありません。

■経営を変えるための5つの切り口!
事業立地・ビジネスの型・集中度合い・値決め・ナンバーワン
発想!を変える。

◆1.事業立地(ポジショニング)を変える!
※一にも二にもこれが重要です。

『…覚えておきたいのは、「一にも、二にも、三にも人」では
ない。一貫してうまくいく有効な解答は、「一にも、二にも、
三にも(事業の)ポジショニング」だ。…』
〔リチャード・コッチ氏(大成功を納めた投資家)〕

『…(高収益企業の研究を通じて)成功例に共通している点は
一目瞭然だった。「事業立地(ポジショニング)」がよいとい
うことだ。仕事の仕方の工夫や製品開発ではなく、そもそも
「何屋さんをやるか」の選び方が優れている。…』
〔三品和広教授(高収益企業研究の第一人者)〕

繰り返しご紹介していますが、上記のメッセージは心に留め置
いていただきたい内容です。レッドオーシャンのど真中に立っ
ているなら、立ち位置をずらしてブルーオーシャンを狙うべき
です。この事業の立ち位置、事業立地を確認してください。事
業立地を変えることは、事業自体を変えるための最も重要な要
素です。

◆2.ビジネスの型を見直す!

経営の幅(商品・サービスや販売拠点等)が伸びきったストアー
型(総合型)のビジネスは総じて苦戦しています。成熟社会の
日本では厳しいようです。脱・ストアー型、プロダクト型(集
中型)からプラットフォーム型を狙う流れが主流です。強いプ
ロダクトに仕上げた上で、プラットフォームの構築を目指して
ください。ビジネスの型を変えることは、事業自体を変えるた
めの最も重要な要素のひとつです。

◆3.集中するために絞り込む!

経営資源が分散していないかの検証も必要です。絞るから強く
なる、絞ることがすべての起点になります。ビジネスの型その
ものだけでなく、ありとあらゆるものを絞り込むことで集中す
る、この発想が重要です。絞り込むと事業自体が変わります。

◆4.高付加価値を狙う!

売上至上主義からの脱却が必要です。必要なのは粗利益であっ
て売上ではありません。繁盛貧乏の原因は過度な売上至上主義
です。「薄利な売上ほど邪魔なモノはない。」、「価格を売る
ための道具に使わない。」この発想を持ってください。高付加
価値化を図ることで、その事業の立ち位置、生きる世界を変え
られます。

◆5.ナンバーワンよりオンリーワン、アッパーニッチ戦略を!

今ないモノ、あっても注目されていないモノ、マーケットが小
さすぎて大手が参入しにくいモノを対象とするビジネスは前途
洋洋です。ナンバーワンは、競争に勝って一番になることです。
オンリーワンは、競争せずに一番(?)になることです。競争
しないためには、他人・他社と違うこと、世の中にないことを
行うことです。お金・人・モノ、これらの経営資源の乏しい会
社こそ、競争しない経営を心掛けるべきではないでしょうか。
小規模零細企業、または、これから独立開業される方こそ、こ
の発想が重要です。
誰もが腰を抜かすような、画期的な商品やサービスを開発する
に越したことはありませんが、容易ではありません。いきなり
このようなことができる会社・社長は稀有です。そうではなく、
今取り組んでいる事業の、ほんの少し目先を変えて、どこにも
ないモノ・コトを開発しましょう。ナンバーワンを狙わずにオ
ンリーワンを目指すことで、経営の目標が大きく変わるはずで
す。『make a change!』に挑戦してください。

借入には1年以内に返済期日が到来する短期借入と、返済期日
が1年を超える長期借入があります。売上金の回収期間が仕入
の支払期間より長い場合に発生する経常運転資金は、回収サイ
トに合わせて短期借入で調達するのが一般的でしたが、近年は
長期運転資金として調達するのが一般的になっています。

◆ 短期借入と長期借入の違い
短期借入と長期借入は、融資審査において、評価ポイントが変
わってきます。短期借入の場合、返済できるかどうかは売掛金
で判断し、長期借入の場合、返済できるかどうかは利益と減価
償却費で判断しています。

モノやサービスは売れたが、代金の回収までに時間を要する場
合、その間の収支ギャップを埋めるために利用するのが短期借
入です。短期借入の返済は、回収した売上代金で行いますので、
たとえ赤字であっても、回収確実な売掛金があれば、短期借入
で調達出来る可能性は十分に考えられます。

一方、長期借入の返済原資は利益と減価償却費です。たとえ回
収確実な売掛金があっても、赤字、かつ将来も利益が出る見込
みがない場合は、返済原資がないため長期借入は原則困難です。

◆ 短期借入と長期借入のメリット・デメリット
期日一括返済の短期借入は、業況が安定していれば基本的に期
日は延長されます。借りっぱなしで返済をしなくてよいため、
資金繰りが安定しやすいというメリットがあります。しかし、
期日に期限を延長してもらえなかった場合は、まとまった返済
資金を一括で用意しなくてはならないリスクもあります。

長期運転資金は毎月一定の返済を行うため、計画的に返済をし
ていくことが可能です。しかし、1,000万円の収支ギャップを
埋めるために1,000万円の借入をしても、約定返済分は資金が
不足しますので、実際に必要な金額よりも余分に借りなくては
ならないというデメリットがあります。

◆ 短期と長期どちらで調達を行うべきか
資金繰りの観点から考えると、毎月発生する収支ギャップ(経
常運転資金)は約定返済のない短期借入で調達すると、利益を
返済に回さずに済むため資金繰りは安定します。投資回収に長
い年月を要する設備資金や、更なる売上拡大に挑戦するための
増加運転資金は、投資効果に合わせて少しずつ返済を進めた方
が資金繰りは安定します。

短期借入と長期借入は単に返済期間が違うというだけでなく、
融資審査のポイントも違うことをご理解いただいたと思います。
そうであれば、短期借入を申し込む場合と、長期借入を申し込
む場合で、金融機関に提出する計画書の訴求ポイントも変えな
くてはなりません。

金融機関の考え方を理解し、金融機関が評価するポイントをし
っかり押さえた書面を作成することが、資金調達をより確実に
します。

■多くの偉人が、経営者に必要な資質の一つに「胆力」を挙げ
ておられます。「胆力」とは何か?を考察してみましょう。

・新しいビジネスモデルを創造する。
・高付加価値の商品やサービスを新たに開発する。
・新しい販売方法を考える。
・効率的な業務の運営方法を考える。
・有事に対応する。
等々

●何かを考えるという行為は、大きな力を必要とします。なか
なか思いつかないことを頭の中から絞り出す、小さなひらめき
に論理的な積み上げや検証を繰り返す、来る日も来る日も、そ
して行き詰っては元に戻り、そして前進する…相応の何かを創
造しようとすれば、わからないことを考え続ける力が必要です。
このプロセスに長期間耐え得る力を「胆力」と定義すればわか
り易いはずです。

●日本の経営学の大家・伊丹敬之先生は著書の中で以下のよう
に言及しておられます。「知力は論理を要求する。しかし、論
理的に考えるからといって、『最後の結論は論理的には不明確
です』だけでは行動はとれない。わからないことはわからない
なりに認めて、しかし一定の方向が正しいであろうと自分なり
に納得する結論に至る論理を構築できるための知力。それが、
行動のバイタリティーを生み出すのにもっとも重要なのである。
では、知力を生み出す知のエネルギーとは何だろうか。それは、
わからないなりに考え抜くための『考える』プロセスを耐える
エネルギーであり、そのプロセスでの論理の積み上をきちんと
できる脳と心のエネルギーである。」
(「よき経営者の姿」日本経済新聞社、伊丹敬之氏著より引用
させていただきました。)

■「よく考える」…この意味をよく考えてみましょう。

●企画やアイデアは偶然思いつくようなものではないはずです。
自分の頭に考えさせて、思いつかせるものです。漠然と求める
ものがあって、求めるもの自体も明瞭でない状況から、雲をつ
かむようにアイデアのかけらを寄せ集める、寄せ集めてみても
形にならない、 再度バラス。また、寄せ集めてみる、少し形が
見えてくる、使い物にならないので一部を残してバラス。何か
が足りないので、仮説を立てて外部からも情報を集める。時に
何千回・何万回も繰り返しながら創り上げる…これが企画やア
イデアの正体です。この過程で、脳細胞が何度も音を立てて破
裂するぐらいの勢いで考えることが必要でしょう。

■「よく考える」ために必要な能力こそが「胆力」です。

●経営者には、「胆力」が必要です。そして、「胆力」を持ち
続けるためには、常に高いレベルのエネルギーを維持しておか
ねばなりません。伊丹敬之先生のお言葉を借りるなら「…わか
らないなりに考え抜くための『考える』プロセスを耐えるエネ
ルギーであり、そのプロセスでの論理の積み上をきちんとでき
る脳と心のエネルギー…」です。故に、「胆力」を有すること
は、経営者にとって極めて重要な資質であって、かつ、その欠
落は致命傷であると言われるゆえんです。

●本田技研工業の第二の創業者と言われる名経営者の藤沢武夫
氏は、以下の言葉を残して引退されました。
「三日間くらい、寝不足続きに考えたとしても間違いのない結
論を出せるようでなければ、経営者とはいえない。平常のとき
には問題がないが、経営者の決断場の異常事態発生のとき、年
齢からくる粘りのない体での『判断の間違い』が企業を破滅さ
せた例を多く知っている。…」
(「藤沢武夫の研究」かのう書房、山本祐輔氏著より引用させ
ていただきました。)

アイデアが出ないのは、「胆力」が足りないから、「考えが足
りない」からです。上記の偉人の定義を踏まえた上で、今一度
自社の経営について「胆力」を使って「よく考えて」みてはい
かがでしょうか。答えはどこかに必ずあるはずです。自社の経
営の解は、経営者自らが見つけ出すしかありません。

マラソンを完走するためには「体の体力」が必要です。一方、
考えるためには「脳と心の体力」が必要です。意識して「脳と
心」を強化したいものです。

借入が必要になりそうだと分かっていても、日々の業務に忙殺
されて後回しになり、いよいよ資金が切れそうなタイミングで
金融機関に駆け込む・・・ご経験のある社長様も多いのではな
いでしょうか。

本来、資金調達業務は、資金が不足した時だけ行う業務ではあ
りません。どれぐらいの資金が、何のために、いつ頃必要なの
かを事前に把握し、どれぐらいの資金を、どこから、どのよう
にして調達するかを戦略的に進めていく業務です。財務業務を
戦略的に進めるためには、財務に関する知識や経験が必要です。
まずは貴社の財務レベルをチェックしてみましょう。

□今期、どれくらいの資金調達が必要か分かっている。
□公庫、信金、地銀、メガバンク、ベンチャーキャピタル・・・
各金融機関の特性を熟知しており、どの金融機関から調達す
るのが最善か分かっている。
□短期借入、長期借入、社債、リース、出資・・・借入の種類
と特徴を熟知しており、どの方法で調達するのが最善か分か
っている。
□金融機関の考え方を熟知しており、金融機関が評価するポイ
ントを分かっている。
□融資を受けやすくするために必要な資料が何か分かっている。

いかがでしょうか。チェックの数が少ない場合は財務レベルに
改善の余地があります。業績が落ち込めば、途端に資金調達が
難しくなる可能性がありますので、次にご提案する財務戦略を
実践してみてはどうでしょうか。

■小規模企業が実践すべき財務業務

1.調達目標額を決める
仮に業績が落ち込んだ時、金融機関は助けになりません。自分
の身は自分で守らなくてはならないため、有事に備えて、「借
りられる時に借りられるだけ借りておく」ことを指針としては
いかがでしょうか。

2.取引金融機関(調達先)を選定する
小規模企業の調達先の選定基準は、「最も安い金利の金融機関
ではなく、最も多く貸してくれる金融機関」です。銀行の知名
度や、多少の金利差に惑わされず、積極的に融資をしてくれる
金融機関を選びましょう。年商3億円未満の企業の場合は、信
用金庫(組合)→地銀→メガバンクの順であたるのがセオリー
です。

3.金融機関と良好な関係を構築する
最大限の調達を行うためには、金融機関を味方につけることが
必須です。金融機関が好むのは、ディスクローズをしっかりと
行える企業です。試算表や資金繰り表をリアルタイムで作成し、
定期的に提出することで、金融機関からの信頼は大きく高まり
ます。

この程度の財務業務を実践するだけでも金融機関の反応は大き
く変わるはずです。資金調達は一発勝負ではありません。お金
を借りる時だけ対処するのではなく、戦略を持ち、日頃から資
金調達に備えておくと安心です。

※自社の事業を広く世に問う、このような状況の事業(数値)
計画ではなく、金融機関向けの計画書を想定しています。

創業融資や設備投資、新店出店時の融資を受けるためには、金
融機関に提出する数値計画の作成が必要です。どのような計画
を作成するのか、コツをお伝えします。

■創業融資や設備投資、新店出店時に融資を受けるための数値
計画の作り方にはコツがあります。

銀行融資プランナー協会の推奨する財務部長として当事務所が
作成する数値計画は、【融資金額を返済するために必要な(返
済後)損益分岐点売上高を基準にした資金繰り計画書】です。
資金が適切に回るように逆算して作ります。これが最善です。

◎金融機関に提出する(融資のための)数値計画には、必要な
2つの要件があります。

◆その1:返済が可能であることです。
例えば、新店出店のために融資を受けて、出店後の売上で返済
ができなければ、そもそも計画自体が成立しません。返済金が
賄える計画を作ることは絶対条件です。

◆その2:想定する売上を実現できる蓋然性が高いことです。
大きな売上計画を立てれば、十分な返済原資を確保できます。
一方、本当にその売上が実現できるのか?との疑念が生まれま
す。想定する売上が大きければ大きいほど、その疑念は大きく
なります。その疑念を払しょくするための理論武装が必要にな
ります。
返済するために必要な売上以上の大きな売上を想定して、その
売上を実現するための蓋然性の説明に苦慮する、このような無
意味な結果を招かないように気を付けてください。

※返済可能な最低売上高(粗利益額)を合理的に説明できない
場合、その計画自体を見直すことになります。

繰り返しますが、銀行融資プランナー協会の推奨する財務部長
として当事務所が作成する数値計画は、【融資金額を返済する
ために必要な(返済後)損益分岐点売上高を基準にした資金繰
り計画書】です。資金が適切に回るように逆算して作ります。
これが最善で、極めて合理的です。

社長様には、「この数字は実現できますか?」とお尋ねします。
社長様に「もっと売れるよ、こんな小さな数字では困る。」と
言われても、「これ以上売っていただくことに問題はありませ
ん。」とご説明します。

※単に融資のためだけの計画にはなり下がりません。
社長様に対して、最低限必要な売上高を示唆する目標計画とし
ての役目を果たしています。

■大きな売上計画を、金融機関は総じて歓迎しません。保守的
な計画が有益です。

心持としては大きな売上の実現を目指してください。当然です。
一方、当初計画を大きく想定して、それに応じた大きな経費の
計上を予定することは、経営リスクを当初から高めます。まず
は、最小限の費用を算出して資金繰り損益分岐点売上高を逆算
します。このバランスするポイントを当初目標に設定してくだ
さい。その後、進捗を確認しながら、経費と売上の上乗せを企
てる…この経営感覚が重要です。

■融資を受けるための数値計画作成にはコツがあります。

売上目標が大きすぎると、その蓋然性の説明に苦慮します。一
方、売上目標が小さすぎると、その借入の返済ができません。

先日、日本政策金融公庫の資本性ローン2,000万円の調達
をお手伝いしました。資本性ローンとは、日本政策金融公庫が
取り扱う5年から15年の期日一括返済型の借入ですが、金融
機関が融資審査を行う際には資本と見做してもらえます。財務
内容の改善に取り組む企業や、売上がすぐには立たない新規事
業に取り組む企業に適した借入です。

S社の事例をご紹介します。

【S社の概要】
直近売上高 約2億5,000万円
直近簡易CF(税引後利益+減価償却費) 約1,500万円
直近純資産 ▲500万円
直近有利子負債 約1億6,500万円

数年前に大口顧客から契約を解除されて売上が半減し、大幅赤
字、債務超過に陥ってしまいました。

その後、経費の見直しを中心としたコストカットに取り組み、
直近決算では黒字化を果たしたものの、依然として債務超過の
状況にあります。

資金繰り面においても、約1,500万円のキャッシュフロー
がありますが、毎月160万円の返済を継続しているため、決
して楽ではありません。これまでも、社長自身で資金調達に動
いてきたようですが、やはり債務超過を理由に断られてしまっ
たとのことです。

S社のように、足元の業績が回復しているにも関わらず、債務
超過が原因で新規資金調達に苦慮している場合は、再生型資本
性ローンの活用がおすすめです。S社は500万円の債務超過
に陥っていますが、仮に2,000万円の資本性ローンを借り
入れできれば、債務超過は解消し1,500万円の資本正と見
做されることになります。

早速、経営改善計画書を作成し、日本政策金融公庫に打診しま
した。計画の内容を前向きに捉えていただき、「資本性ローン
が入れば、積極的に支援してくれる取引金融機関があった方が
審査を進めやすい。」とのアドバイスをもらいました。

アドバイスのとおり、メインの金融機関に出向き、資本性ロー
ンを活用した経営改善計画を説明したところ、「確約はできな
いが、債務超過という障害がなくなれば、新たな融資も検討可
能である。」との見解を頂戴し、さらに、公庫の担当者に電話
を入れて支援の意思表明をしてくださいました。

結果、2,000万円の資本性ローンを無事に受けることがで
きましたが、公庫の担当者は、「民間金融機関の支援姿勢を確
認できたことが大きかった。」とおっしゃっていました。

その後、メインの金融機関からも1,000万円の追加融資を
受けることができ、資金繰りは十分に安定しました。

足元の業績は回復しているが、債務超過により資金調達に苦慮
している企業様は、資本性ローンの利用を検討してはいかがで
しょうか。ご相談ください。

売上・利益を積み上げるためには、容易ではありませんが、同
時並行で以下の5つの仕組みをバランスよく構築していかねば
なりません。

◆1.顧客候補に種をまき続ける仕組み
次の顧客、顧客候補に対する継続的なアクションが必要です。
顧客が1.0とするならば、まったく縁のない0から始まって0.2、
0.3…0.9と格上げしていく仕組みが必要です。顧客は、0から
いきなり1.0にはなりません。段階を経て1.0に近づきます。

◆2.上記の仕組みで、顧客が増える仕組み
商品やサービスは、軽いものから順番に構成することが常道で
す。買いやすい商品やサービスで満足頂きながら、徐々に高額
なものへと移行してもらいます。今の商品やサービスの敷居が
高いなら、敷居の低いそれを追加してください。

◆3.顧客をグリップして離さない仕組み
1.0の顧客を1.1、1.2へと引き上げる仕組みが必要です。
顧客になっていただいてからが正念場です。満足度の向上を目
指しましょう。すべての場面において、顧客候補よりも(既存)
顧客を優先してください。逆転は愚です。(既存)顧客が離れま
す。

◆4.顧客に新しいサービスや商品を継続して提供できる仕組

(既存)顧客からは直接声を聴いて、商品・サービスの充実を図
りましょう。顧客満足度が高ければ、高い確率で第2・第3の
商品・サービスを購入してもらえます。プロモーションコスト
極小の販売になります。結果として高収益が狙えます。

◆5.顧客が顧客を紹介してくれる仕組み
上記の◆3.と◆4.ができておれば、自ずと(既存)顧客が新
しい顧客を紹介してくれます。

ビジネスの好循環サイクルとは『自社(自分)の意図する所に顧
客を呼び込む、このためには最初の商品やサービスが必要にな
ります。呼び込んだ顧客に対して、次々とより付加価値の高い
商品やサービスを提供し続ける、一方で、新規顧客を呼び込み
続ける、このサイクルでビジネスを拡大する、これが、ビジネ
スの好循環サイクルです。』

◇1.『顧客候補に種をまき続ける仕組み』を構築できないと
ビジネスは広がりません。
(既存)顧客の対応で手一杯になってしまうケースでは、新規顧
客の開拓ができないので、ビジネスが広がりません。
(既存)顧客が切れた時に次の顧客を求めて埋める、何年経って
も同じレベルを推移します。
顧客候補に種をまき続ける仕組みが必要です。

◇2.『顧客候補に種をまき続ける仕組み』が弱いと新規顧客
を獲得できません。
顧客候補への、継続的な高品質の情報配信が最適です。また、
敷居の高い商品・サービスは新規顧客の獲得には不向きです。
成果が不十分と判断すれば、より敷居の低いそれを投入してく
ださい。

◇3.『顧客をグリップして離さない仕組み』はビジネスの要
諦です。
顧客が満足する商品・サービスを提供し続けることは、ビジネ
スの要諦です。(既存)顧客のグリップ率は、経営における最も
重要な指標です。限りなく百%を目指しましょう。

◇4.『顧客に新しいサービスや商品を継続して提供できる仕
組み』が高収益の源泉になります。
このステージでは、高付加価値でプロモーションコスト極小の
商品・サービスを提供できます。本当の利益はここから生まれ
ます。顧客の声に耳を澄ませて、確実なそれを提供しましょう。

◇5.『顧客が顧客を紹介してくれる仕組み』ができれば本物
です。
これは仕掛けではなく結果です。(既存)顧客の満足度向上が原
因、その結果が紹介です。

成長企業は、5つの仕組みをバランスよく構築することで、
『ビジネスの好循環サイクル』を築き上げています。貴社も、
意識して取り組んでください。

平成31年1月~3月のセーフティネット保証5号の指定業種
が発表されました。セーフティネット保証5号とは、業況の悪
化している中小企業が利用できる保証制度です。指定業種に含
まれていなければ利用できない制度ですので、まずはご自身の
業種が指定業種に含まれているか、下記中小企業庁のホームペ
ージにてご確認ください。

◆指定業種一覧
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2018/1812205gou.pdf

ご自身の業種が指定業種に含まれていたら、次に、直近3ヶ月
間の売上高を前年同期間の売上高と比較します。もし、売上高
が5%以上減少していれば対象となりますので、セーフティネ
ット保証制度に申し込むことが可能です。(指定業種かつ売上
減少が要件です。)

具体的な申し込みの流れは、まず市区町村長の認定を受け、そ
の後、銀行等金融機関に認定書を持ち込みます。認定の受け方
については中小企業庁のホームページでご確認ください。

◆認定の受け方(中小企業庁HPより引用)
対象となる中小企業の方は、法人の場合は登記上の住所地又は
事業実体のある事業所の所在地、個人事業主の方は事業実体の
ある事業所の所在地の市町村(または特別区)の商工担当課等
の窓口に認定申請書2通を提出(その事実を証明する書面等が
あれば添付)し、認定を受け、希望の金融機関または所在地の
信用保証協会に認定書を持参のうえ、保証付き融資を申し込む
ことが必要です。(引用終わり)

信用保証協会は、中小企業が無担保で利用できる保証限度額が
8,000万円と定められています。あくまでも利用可能な枠のこ
とであり、必ず8,000万円の保証を受けられるということでは
ありませんが、セーフティネット保証制度は、さらに別枠で
8,000万円の保証枠が設けられます。

通常の融資審査は業績が悪いと通りませんが、本制度は業績が
悪くなければ利用することができません。また通常の金利は、
業績が悪くなればなるほど高くなりますが、本制度は低い金利
で利用することができます。業績が悪くなることを歓迎したく
はありませんが、そうなった場合には利用したい制度です。

「足元の売上高が一時的に減少しているだけでも利用できるか?」
「売上高は落ちているが利益が出ている場合は?」「売上高が
伸びている事業と落ちている事業がある場合は?」等、本制度
の利用についてご質問やご相談があれば、お気軽にお問合せください。