働き方改革は、契約形態や労働形態の多様化を意味します。

■自然人と法人との契約の形態は様々です。大きく四つに区分
できます。

◆1.雇用契約
○労働者は「労働時間」を提供することで、会社から「賃金」
を受け取れます。
○成果物の完成責任は負いません。
○指揮命令権はあります。
○労働力の提供が行われないと、その責任が問われます。

◆2:派遣契約
○労働者は派遣会社に雇用され、派遣会社は提供する「労働時
間」に対して報酬を受け取れます。
○成果物の完成責任は負いません。
○指揮命令権はあります。
○労働力の提供が行われないと、その責任が問われます。

◆3:請負契約
○請負人は「仕事の完成」と引き換えに会社(依頼者)から報
酬を受け取れます。
○成果物の完成責任を負います。
○指揮命令権はありません。
○成果物が納品されない、成果物の不良や不具合(瑕疵担保責
任)に対して責任が問われます。

◆4:委任、準委任契約
○断続的な業務処理(法律行為など)に対し、一定の報酬を受
け取れます。
○成果物の完成責任は負いません。
○指揮命令権はありません。
○約束していた業務が適切に実施されていない(善管注意義務
違反)ことに対して責任が問われます。

正社員・派遣・アルバイトなどの、「労働時間を提供して対価
を得る」働き方だけでなく、「対価を担保して時間を自由にす
る」請負契約的な働き方も増えてくるはずです。

■テレワーク(離れたところで働く)の労働形態も、ますます
増えそうです。大きく三つに区分できます。

◆1:在宅勤務(終日在宅勤務)
終日、所属するオフィスに出勤しないで自宅を就業場所とする
勤務形態です。オフィスに出勤したり、顧客訪問や会議参加な
どによって外出したりすることがなく、1日の業務をすべて自
宅の執務環境の中で行います。通勤負担が軽減され、時間を有
効に活用することができます。

◆2:モバイルワーク
移動中(交通機関の車内など)や顧客先、カフェなどを就業場
所とする働き方です。営業など頻繁に外出する業務の場合、様
々な場所で効率的に業務を行うことにより、生産性向上の効果
があります。テレワークでできる業務が広がれば、わざわざオ
フィスに戻って仕事をする必要がなくなるので、無駄な移動を
削減することができます。

◆3:サテライトオフィス
所属するオフィス以外の他のオフィスや遠隔勤務地の施設を就
業場所とする働き方です。例えば、所属するオフィス以外の他
のオフィスが従業員の自宅の近くにある場合、そのオフィス内
にテレワーク専用の作業スペースを設けることで、職住近接の
環境を確保することができ、通勤時間も削減することができま
す。また、遊休施設や空き家などを活用して行う遠隔勤務には、
組織の活性化や地方創生など、多様な期待が寄せられています。

一昔前とは様変わりした労働に対する考え方が、様々な契約形
態を創出していくはずです。
また、進化したITが、新しい労働形態を可能にしてくれまし
た。10年前には考えられない働き方ができます。
業種や業務によって異なりますが、先入観にとらわれ過ぎず、
新しい契約形態や労働形態に挑戦することも、働き方改革の波
に乗るための重要な要素ではないでしょうか。
50人の社員を抱える会社の事務所には、50人分のスペース
を用意する、この常識が非常識になる日も近そうです。

会社が行う投資の中で最も高額なものは人材投資です。新卒社
員を定年まで雇用すると数億円の投資になります。そして、最
も投資効果を測りにくいのも人材投資です。

機械等への投資は、一定のパフォーマンスが確実に見込めます。
大きくぶれることはありませんので、投資効果の将来予測も簡
単です。人材への投資は、A社員とB社員を同じ条件で雇用し
たとしても、そのパフォーマンスは大きく違う可能性がありま
す。

適正な人件費を測る指標のひとつに労働分配率があります。付
加価値に占める人件費の割合で、人件費が多いか少ないかを判
断するものですが、付加価値額との相対的な指標であり、また、
事業の立ち上げ期なのか円熟期なのかといったライフサイクル
によっても評価が変わりますので、人件費そのものが適正かど
うかは判断できません。

「良い人材」とは会社にとって重要な「資産」です。しかし、
機械の様にバランスシート上に資産として表示されませんので、
財務戦略上は軽んじられる場合があります。「収益力回復のた
めに各人の人件費を10%カットする。」というのは簡単に導
きだせる理屈ですが、10%の人件費カットが優良な資産を大
きく劣化させる危険性もあります。人材の層が厚い大企業より
も中小企業の方がより大きな影響が現れます。

反対に、10%の人件費増加でそれ以上の資産価値上昇をもた
らす可能性もあります。2億円で購入した人材が、やり方次第
で3億円の価値になるかもしれません。3億円の機械は、3億
円の資金が無ければ買えませんが、3億円の価値がある人材は、
2億円で買える可能性があります。人材投資の面白いところで
す。

中小企業の事業がスケールしない理由のひとつは人材不足です。
高額な報酬を払えない中小企業にとって、雇用した人材が投資
額以上のパフォーマンスをあげられなければ、飛躍的な成長は
難しくなります。

まずは人材を確保するための資金調達が必要ですが、調達した
資金を効率よく人材に投資する仕組みやノウハウの構築にも最
大限の努力を払う必要があります。過度に慎重になる必要はあ
りませんが、深く考えずに人材投資を行って失敗すれば、その
後の成長に小さくない打撃を受けます。

■永続できる企業は存在しますが、永続できるビジネスモデル
は存在しません。

○昔・昔、石炭採掘業は全国各地で勃興しました。多くの人々
が、(重労働の対価として)経済的には豊かな生活を送ってい
ました。ある時を境に石炭採掘業の地位は、輸入される原油に
取って代わられました。石炭採掘業の売上は、石油を調達する
商社や、それらを運ぶ大型タンカーの売上等に変わったのでし
ょう。

○『六万五千人のうち、五万人が職を失う』、1979年から1981
年にスイスで機械式時計を作っていた職人の話です。世界の時
計市場を支配していたスイスが、そのリーダーの地位を明け渡
した瞬間の話です。その相手は日本(クオーツ時計)です。こ
の変化は短期間で起こりました。パラダイムシフトと呼びます。

○昔・昔、駅前の商店街は活気にあふれていました。商店主た
ちは、同世代のサラリーマンと比較しても、はるかに多くの報
酬を手にしていました。ある時を境に、その売上の大半が郊外
のショッピングセンターに流れて行きました。都心の一部を除
いて、駅前の商店街は壊滅しました。

○この話は続きます。駅前の商店街から多くの顧客を奪い取っ
たショッピングセンターも、品ぞろえの専門性に特化したカテ
ゴリーキラーや、小商圏に高密度で出店するコンビニエンスス
トアーに劣勢を強いられています。統廃合を経て、一部の強者
のみが生き残っていますが、その利益は減少傾向です。

○この話にはさらに続編があります。『アマゾン・エフェクト』
(※アマゾンに代表されるネット通販の台頭が、既存の小売業
を駆逐する現象)です。今の勝者も近い将来敗者になるかもし
れません。10月15日、米国小売りの名門企業、シアーズが破産
法を申請しました。…等々

■企業を永続させるためには、時流の変化への対応が必要です。

ダーウィンは、『この世に生き残る生き物は、最も強いものか。
そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、
変化に対応できる生き物だ。』と言っています。
(※注記;この言葉を、ダーウィン自身が言葉にしたかどうか
については、見解が分かれているようです。)
また、今年生まれた子供たちが就職する業種の半分は、今は無
い業種だと言われています。
二十年後には、今の業種の半分が無くなり(または、大きく形
を変え)、半分が新たに生まれるとの仮説です。流通業界等の
変遷を見ていると、オーバーな仮説ではないように思えます。
あらゆる業界で、貴社にも、当社にも、同じ事が起きています。
これからも起こります。

■変化への対応とは何か?

何か新しい事、何かすごいものを創り出そう…こう考えてしま
うと行き詰ります。発明家のトーマス・エジソンは『完璧だと
思っても、もうひと押しすれば、おまけが手に入る』との言葉
を残しておられます。この言葉には、大きなヒントがありそう
です。さらに成長しようと考える時、人は新しいものに飛びつ
いてしまいがちです。そうではなく、今あるものをより良くし
なさい、一歩となりを探しなさい、とおっしゃっているように
思います。

■今の商品やサービスを『もうひと押し』してみましょう。

・今ある商品やサービスに改善・改良を加えましょう。改良を
施して完成度を上げましょう。より良い原料を使って、高品質
化を図りましょう。高価格帯に挑戦しましょう。

・今ある商品やサービスに、何か機能を付加しましょう。便利
な機能を付加してみましょう。余分な機能を除いて単純化する
ことも検討してください。

・顧客ターゲットを絞り込んだ、新しい商品やサービスを開発
しましょう。よりニッチなターゲットに限定してみましょう。

・特定の顧客をターゲットにした、新しい商品やサービスを開
発しましょう。新しいニッチマーケットを狙ってみましょう。

■大きな変化は、日々の改善・改良の延長線上にあります。

・毎日毎日『もうひと押し』を考え続けましょう。
・時々小さな改良点が見つかります。改良しましょう。
・これを続けていると、一年単位では相当大きな変化が起きて
いるはずです。
・三年・五年・十年の計でみると、とんでもない大変化になっ
ています。

■変化を実感する企業経営を、意識して実行しましょう。会社
のビフォーアフターを確認してください。

・三年前の経営と、今年の経営を比較してください。
・今年の年初の経営と、今年の年末の経営を比較してください。
何がどう変化していますか?整理してください。

・今年の年末と、来年の年末はどう変える予定ですか?
・今に対して、三年後はどう変える予定ですか?具体的に何を
どう変えますか?整理してください。

繰り返しますが…
◎『この世に生き残る生き物は、最も強いものか。そうではな
い。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応
できる生き物だ。』(ダーウィンの進化論)
◎『完璧だと思っても、もうひと押しすれば、おまけが手に入
る』(発明家のトーマス・エジソン)

偉人の名言を記憶に留め、経営者として会社を変化させる努力
を継続しましょう。

「財務戦略」とは、「資金の調達と運用」を「戦略的」に行う
ことです。利益を最大化するために、いつ、どこから資金を調
達して、どこに資金を費やせば良いかを戦略的に検討します。

中小企業は、さらに積極的な財務戦略が必要です。今月末の支
払が苦しい等、資金ニーズが発生してから資金調達を考えるの
ではなく、資金ニーズが発生することを予測して、もしくは資
金ニーズを自ら作り出して、資金調達を積極的に行うことが
「攻めの財務戦略」です。

◆財務戦略が無い場合・・・
・月末の資金が不足することが直前にならないと分かりません。
・「機械が壊れる」等の突発的な支出の対応に苦慮します。
・余裕資金が無いため、急なビジネスチャンスに対応できませ
ん。
行き当たりばったりの経営で有事への対応力が弱く、安定した
経営が難しい状況です。また、投資に対する効果という概念が
ないため、結果的に無駄遣いが多くなってしまいます。

◆保守的な財務戦略の場合・・・
・「新しいことは何もしない」という硬直化した企業体質に陥
ってしまいます。
・自社の事業の投資効果が薄れていても、気づかないまま事業
を継続してしまいます。
・視野が狭くなり新しいビジネスチャンスを見逃してしまいま
す。
比較的財務内容が良い企業でも、近年、10年安泰な事業はそ
れ程多くはありません。一定のリスクを冒して攻めなければ、
成長することはもちろん、生き残ることすら難しい時代です。

◆攻めの財務戦略の場合・・・
・資金調達を積極的に行い、キャッシュポジションを常に高く
維持しています。
・資金繰りが安定し、落ち着いて経営が出来ます。
・ビジネスチャンスがあれば、スピーディに対応できます。
・機械の買い替えなど、投資計画を立てて、計画的に資金を調
達します。
・自社の事業モデルの進化発展を、常に考えるようになります。
しっかりと計画を立て、先回りをして資金調達に動きます。資
金に余裕を持つことで経営の選択肢が広がります。

大企業でさえ、成長分野を探して資金を投下し、事業モデルを
変化させながら生き残りを図っています。大企業よりも資金調
達力に劣る中小企業は、大企業以上に攻めの財務戦略が必要で
はないでしょうか。

■労働基準法第35条には「使用者は、労働者に対して、毎週少
くとも一回の休日を与えなければならない」と書いてあります。
この法律が制定されたのは1947年で、今も変わりません。週休
二日制は法令の定めるところではありません。
有名な話ですが、週休二日制を始めたのはパナソニック(当時
は松下電器産業)の松下幸之助氏で、そのスタートは1965年で
す。1980年頃には多くの企業に、官公庁に導入されたのは1992
年、さらに、公立小中学校及び高等学校の多くでは、2002年に
毎週土日が休みになっています。
いざなぎ景気の真っただ中の多忙期に、松下電器(当時)の労
働組合は大反対したそうですが、松下幸之助氏は、「1日休養、
1日教養」の精神を説いて導入に踏み切ったそうです。

■松下幸之助氏の「1日休養、1日教養」の精神とは…松下幸
之助自身の著書『社員心得帖』(PHP研究所)から引用させて
いただきます。

『…私どもの会社では、昭和四十年に完全週五日制に踏みきっ
たのですが、それから半年ほどたったころ、私は社員につぎの
ような話をしたことがあります。「わが社が週五日制になって
から半年の月日がたったけれども、皆さんは週二日の休みをど
のような考えで過ごしておられるだろうか。一日教養、一日休
養というように有効に活用できているかどうか。二日間の休み
を無為に過ごすのでなく、心身ともにみずからの向上をはかる
適当な方法を考え、実行していただきたいと思う。ただ、その
みずからを高めるというか、教養を高めたり、仕事の能力を向
上させたり、あるいは健康な体づくりをすることと関連して、
私は一つ皆さんにお尋ねしたい。それはどういうことかという
と、ほかでもない。皆さんが勉強なり運動をするときに“自分
がこのように自己の向上に努めるのは、ただ単に自分のためば
かりではない。それは社会の一員としての自分の義務でもある
のだ”という意識をもってやっておられるかどうか、というこ
とである。そういうことを皆さんは今まで考えたことがあるか
どうか、また現在考えているかどうかをお尋ねしたいと思う」
そのとき、なぜ私がそのようなことを質問したのかといいます
と、そういう義務感というものは、社員一人ひとりが常にもっ
ていなければならない非常に大切なことだと考えていたからで
す。…』

■社会人として二十年近く時間を経て四十歳ぐらいになると、
そのビジネスマンとしての実力の差は歴然とします。時間を経
て、どんどん天文学的に差は広がります。

1.出来る分野・領域の広さに大きな差が付きます。
○良くできる人は、概ねどんな業務もやる気になれば対応でき
ます。
○そうでない人には、極めて限定的な仕事しか与えられません。
できないからです。

2.業務の精度・スピードに雲泥の差が出ます。
○知恵を使う業務であれば、できる人とそうでない人の差はざ
っと数十倍ぐらいでしょうか。
○単純な業務であっても、その差は3倍ぐらいになるように感
じます。

なぜ、これだけの差がついてしまうのでしょうか。以下の話が
参考になりそうです。

■ある著名な大リーガーの専属トレーナーを長年務めた名コー
チに、話を聴く機会がありました。一流選手と二流選手、そし
て、三流選手の違いについて教えてもらいました。

○三流選手は、練習中も練習をやり過ごしています。練習後は、
当然野球のことを忘れて気楽に生きています。
○二流選手は、練習には全力で取り組んでいます。ただ、練習
後は、あまり野球のことを考えずに過ごしています。
○一流選手は、練習後のオフも、ずっと野球のことを考えなが
ら生きています。そして、野球を考えることを楽しんでいます。
○二流選手と三流選手は、オフを本当の休暇だと捉えています。
○一流選手は、オフを次のシーズンに備えるための期間、休み
を次の試合に備えるための時間と捉えています。
○二流選手と三流選手は、(多分)野球を食うための糧、義務
と捉えているように感じました。
○一流選手は、野球が天職であり、自分に与えられた使命だと
考えているように思いました。
○『活躍の度合いは、もちろん持ち合わせた素質の差によると
ころも小さくないですが、上記のような考え方の差でも大きく
変わります。晩成型の選手は、考え方がしっかりしています。
他の分野も同じではないでしょうか?』と締めくくられました。

年間(365日)の約三分の一は休日です。労働時間は全体
(8,760時間)の約20%です。『ワークライフ』バラン
スで減らしたワークの行先は、ライフのみではなくラーンであ
るべきです。『ワーク&ライフ&ラーン』バランスと定義すれ
ばわかりやすいのかも知れません。
働き方改革で生まれる自分自身の自由時間をどのように活用す
るかで、各人の将来が決まります。
「1日休養、1日教養」(松下幸之助氏)の精神で過ごしたい
ものです。

様々なところで「経営者は数字に強くなくてはならない!」等
と言われます。そもそも、「数字に強い」とはどういう意味で
しょうか。「計算が速い」、「多種多様な公式を操ることがで
きる」、といった「計算する力」ではなさそうです。

高度な数学の知識がなくても、特段経営に支障はないはずです。
暗算が苦手ならば電卓があります。帳簿づけが苦手ならば経理
の担当者が、給与計算が苦手ならば社労士さんが、税金の計算
が苦手ならば税理士さんがサポートしてくれます。経営者自ら
が計算しなくても、文明の利器や人材を上手に活用して、経営
に必要な情報を収集する事は可能です。大切なのは計算する力
ではなく、正しい経営判断を下すために、収集した数字の情報
を読み解く力です。

「数字に強い」とは、「数字を読み解く力」の事を指していま
す。算数ではなく国語です。経営者は財務諸表を作れなくても
問題はありませんが、出来上がった財務諸表を読み解く力は絶
対に必要です。財務諸表の読み方を覚えることは、スポーツを
始める時にルールを覚えるのと同じぐらい基本的なことです。

ただ、本当に重要なのはその次です。同じ財務諸表でも、税務
署、銀行、経営者は、それぞれの立場によって全く違った見方
をします。基礎的な読解力は当然のこととして、税務(税務署)、
財務(銀行)、経営の3つの目線で決算書を読み取れなくては
なりません。その「深み」が分かれば、よりバランスの取れた
経営判断を下すことができます。

しかし、3つの目線で財務諸表を読めるようになるには、実際
に税務調査を経験したり、銀行からお金を借りたり、経営者と
してのキャリアを積み重ねたり、といった経験と実績が少なか
らず必要です。書籍に頼っても、この「深み」についての記述
があるものは殆ど存在しません。

では、「財務諸表の深みを読み取れるようになるまでに何年も
時間をかけてはいられない。」という経営者様はどうすれば良
いのでしょうか。簡単ではありませんが、適切な人材を探して
任せるしかありません。教科書的に財務諸表を読み語れる人材
は星の数ほどいますが、中小零細規模企業の財務諸表の深みを
読み語れる人材は本当に希少ですので、次のポイントに留意さ
れてはいかがでしょうか。

・経営者や実務担当者として、実際に税務調査を受けた経験が
あるか。

・経営者や実務担当者として、実際に金融機関から資金の調達
を行った経験はもちろん、相当数の実績があるか。

・これらの経験や実績は、自社と同程度の規模の会社で培った
ものか。

的確な経営判断を下すために、社内外を問わず、財務諸表の深
みを読み取れる機能を有してください。

■成長局面の会社様、売上をしっかり伸ばしましょう。
ただし、
○粗利益率の管理をしっかり行ってください。
○固定費の管理をしっかり行ってください。
○資金繰りの管理をしっかり行ってください。
成長局面の一年間で、売上高が前年比40%増、粗利益率が
▲8%、固定費が40%増…大幅な赤字に陥った会社様もあり
ます。(A社)

企業の経営成績は、売上高・粗利益率・固定費、この三つの要
素で構成されています。この三つをバランスよく組み合わせる
ことができた時、成長と高収益を実現できます。
A社のケースでは、売上高を優先し過ぎたために、粗利益率を
過度に犠牲にしてしまいました。結果、大幅な赤字転落となり
ました。〔売上至上主義・安売り症候群〕
売上高の伸びを少し抑えて、同時に固定費の伸びも少し抑えて、
粗利益率を守る戦略を立案できておれば、このようなことには
なっていなかったはずです。
当該年度のスタート時に、社長様は、「とにかく売上高を伸ば
す」と考えておられたことでしょう。そうではなく、例えば、
「売上は伸ばしたいが、粗利益率は横ばいを維持する、固定費
は20%以上膨らまさない。売上高は20%ぐらい伸ばす。」
この様な決意で臨んでおれば、このような大幅赤字には転落し
なかったはずです。
業績は社長の想いの結果です。ある意味、社長の想いが実現し
たようです。

■成長局面の会社様、管理体制の整備をお願いします。

○品質管理の徹底をお願いします。
○労務管理の徹底をお願いします。
○取り扱うサービスや商品数の管理の徹底をお願いします。
創業から急激に成長する過程において、事業立ち上げを最優先
して行った結果、品質問題での取引先トラブル(B社)、労務
問題の発生、品ぞろえの拡大による利益率の急激な低下に陥っ
た会社様もあります。〔前のめり症候群〕

成長のスピードが速ければ速いほど、会社は様々なトラブルに
遭遇します。ある種の必然であり、悲観する必要はありません
が、一つ一つ解決していかねばなりません。解決できないまま
で、さらに加速を続けると、致命的な問題を起こしてしまいま
す。成長スピードが実力と比して過度に速ければ…

○サービスや商品の品質トラブルを起こします。
品質を守るための仕組みや投資が必要です。
○多忙な業務を現従業員の頑張りのみに長期間依存しておれば、
必ず労務問題が発生します。社内からだけではなく、監督官
庁からの厳しい罰則を受けるかもしれません。未経験の方に
はわかりにくいかも知れませんが、労務問題のダメージは強
烈です。
○また、一点特化ではなく、面を拡大しながらの成長は、生産
性の悪化を招きがちです。次の成長のための停滞も、時には
必要です。

■成長局面の会社様、経営を管理してください。

経営には、管理できることと、管理できないことがあります。
◆管理できる重要なことを管理して、
◆管理できない重要なことをリスクとして認識し備えることが
重要です。

○会社には各社特有の要諦があります。管理すべきこと、リス
クと捉えるべきことは、この要諦です。見つけ出して、管理
項目に、リスク項目にあげてください。
○各社共通で管理すべき項目は、
・資金繰り
・(結果としての)売上高
・粗利益率
・固定費
・生産性
・利益
等々です。
動きの速い会社様ほど、管理は重要です。実行してください。

伸ばせる時に伸ばさなければ会社は成長しません。時には、
少々無理をしてでも伸ばすことも必要でしょう。一方、会社が
リスクに遭遇するのは、停滞期や衰退期よりも成長期であるこ
ともご認識ください。
伸ばす時、伸びている時ほど心配して備えることが必要です。
成長局面の会社様の更なるご発展を祈念いたします。

平成30年10月~12月のセーフティネット保証5号の指定
業種が発表されました。セーフティネット保証5号とは、業況
の悪化している中小企業が利用できる保証制度です。指定業種
に含まれていなければ利用できない制度ですので、まずはご自
身の業種が指定業種に含まれているか、下記中小企業庁のホー
ムページにてご確認ください。

◆指定業種一覧
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2018/18092025gou.pdf

ご自身の業種が指定業種に含まれていたら、次に、直近3ヶ月
間の売上高を前年同期間の売上高と比較します。もし、売上高
が5%以上減少していれば対象となりますので、セーフティネ
ット保証制度に申し込むことが可能です。(指定業種かつ売上
減少が要件です。)

具体的な申し込みの流れは、まず市区町村長の認定を受け、そ
の後、銀行等金融機関に認定書を持ち込みます。認定の受け方
については中小企業庁のホームページでご確認ください。

◆認定の受け方(中小企業庁HPより引用)
対象となる中小企業の方は、法人の場合は登記上の住所地又は
事業実体のある事業所の所在地、個人事業主の方は事業実体の
ある事業所の所在地の市町村(または特別区)の商工担当課等
の窓口に認定申請書2通を提出(その事実を証明する書面等が
あれば添付)し、認定を受け、希望の金融機関または所在地の
信用保証協会に認定書を持参のうえ、保証付き融資を申し込む
ことが必要です。(引用終わり)

信用保証協会は、中小企業が無担保で利用できる保証限度額が
8,000万円と定められています。あくまでも利用可能な枠
のことであり、必ず8,000万円の保証を受けられるという
ことではありませんが、セーフティネット保証制度は、さらに
別枠で8,000万円の保証枠が設けられます。

通常の融資審査は業績が悪いと通りませんが、本制度は業績が
悪くなければ利用することができません。また通常の金利は、
業績が悪くなればなるほど高くなりますが、本制度は低い金利
で利用することができます。業績が悪くなることを歓迎したく
はありませんが、そうなった場合には利用したい制度です。

「足元の売上高が一時的に減少しているだけでも利用できるか
?」「売上高は落ちているが利益が出ている場合は?」「売上
高が伸びている事業と落ちている事業がある場合は?」等、本
制度の利用についてご質問やご相談があれば、お気軽にお問合
せください。

社長も従業員も多忙を極めているのに利益が出ない状況の会社
は少なくありません。これを繁盛貧乏と呼んでいます。何が間
違えているのか?考えてみましょう。

■収益と忙しさの状態で会社を4つに分類すると以下になりま
す。

1.繁盛高収益企業…
「当社は忙しいです。故に大変儲かっています。」
2.閑散貧乏企業…
「当社は暇です。故に儲かっていません。」

上記の二つは納得できます。
また、

3.閑散高収益企業…
「当社は多忙ではありませんが、それでもしっかり利益を
出しています。」社長の腕前がいいのでしょう。

一方、

4.繁盛貧乏企業…
「当社は超多忙ですが、利益はありません。」

■繁盛貧乏企業にならないように、また、そうであるならば抜
け出すための方法を考えてみましょう。

繁盛貧乏に陥る会社には概ね共通点があります。

◆理由1:
価格(安売り)を売るための道具として安易に利用する。

事業は、その商品やサービス内容、ブランドで商品やサービス
を売っていくものです。そのサービス内容やブランドを磨かず
に、その不足分を価格で補おうとする行為は命取りです。価格
は売るための道具ではありません。この認識と決意が必要です。
売るための道具として安易に低価格を訴求していると、繁盛貧
乏に陥ります。

⇒価格(安売り)を売るための道具として安易に利用しないで
ください。

◆理由2:
閑散であることに耐えられない。売上至上主義に陥る。

とにかく売上が欲しい、間違えではありませんが、売上の総額
だけを追いかけると、利益の概念が希薄になります。売上だけ
を求めずに、利益を同時に追いかけてください。

⇒売上至上主義に陥らないでください。

◆理由3:心から利益を求めていない。

節税指向を過度に持ち合わせている社長も少なくありません。
税金は、利益に係数を乗じた金額です。節税の行きつくところ
は利益を出さないことです。心から利益を求めない事業体が高
収益を上げることはありません。

⇒利益を心の底から求めてください。

◆理由4:ビジネスモデルが疲弊している。事業領域が悪い。

「貴社は、類似の他社と何が違いますか?」この質問に対して、
明確な解を提供できない会社は絶対に儲かりません。この解を
顧客に提供し続けること、そのために商品やサービス内容、ブ
ランド等を徹底的に磨きましょう。

⇒どこにでもある事業は通用しない時代です。うまく行っても
繁盛貧乏です。他にない何かを創り上げましょう。

◆理由5:客層が悪い。(生きる世界が悪い。)

世の中は原因と結果、因果の関係が明確に成立しています。良
い会社には良い顧客が、そうでない会社にはそうでない顧客が、
逆に、良い顧客は良い会社を、そうでない顧客はそうでない会
社を選びます。鶏と卵…どっちが先かの議論に終着しますが、
価格(安売り)を売るための道具として安易に利用すると、そ
れに乗っかって、他者の価値を認めない顧客が訪れるようにな
ります。

⇒良い会社(事業)を作って良い顧客とお付合いしましょう。

忙しいのに儲からない「繁盛貧乏」の状態は、会社を根底から
疲弊させてしまいます。この状態を継続すると、知恵を生む気
力を奪い去ってしまいます。最終的に市場から退場する会社の
多くはこのパターンです。

◎1.価格(安売り)を売るための道具として安易に利用しな
いでください。
◎2.売上至上主義に陥らないでください。
◎3.利益を心の底から求めてください。
◎4.他にない何かを創り上げましょう。
◎5.良い会社(事業)を作って良い顧客とお付合いしましょう。

SP経営では、上記を総称して【安売り症候群】に対する対策
【Profitable=高付加価値化】と定義しています。この機会に
ご再考いただければ幸いです。

建設業を営むある社長様から、「資金繰りが厳しいが銀行に融
資を申し込んでも相手にしてもらえない。」とのご相談があり
ました。銀行に対してどのようにアプローチしているのかをお
聞きしたところ、「1億円の資金が必要なことを伝え、決算書
と試算表を提出した。」とおっしゃいます。1億円を5年返済
で借りた場合、年間2,000万円の返済が必要になります。
同社の決算書では500万円程度のキャッシュフローしかあり
ませんので、決算書や試算表だけでは、逆に「返せない」こと
を銀行に伝えたことになります。

まず1億円が必要な理由をお聞きしたところ、1.5億円の大
型案件を受注したことにより、先出しになる原価部分がおおよ
そ1億円あるという回答でした。しかし、一方で回収条件もお
聞きしたところ、工期は約1年で、着手時30%、中間で30
%、完工時に40%とのことです。おおよその外注費の支払時
期と入金時期を擦り合わせたところ、5,000万円の資金が
あれば十分にキャッシュが回ることが分かりました。

◆社長のお話をお聞きしたうえで次の資料を弊所にて作成しま
した。

・当該案件の原価の金額や割合を明確にした売上原価表
・5,000万円の資金を借入し、中間時に2,500万円、
完工時に2,500万円を返済する資金繰計画表

◆社長と一緒に銀行に訪問し資料を提出しました。
売上原価表と資金繰計画表をお見せして、5,000万円が必
要な理由を説明し、回収条件が明記されている契約書をお見せ
して返済の確実性を示しました。

最終結果は、当方の申し出どおり、融資金額5,000万円、
6ヶ月後に2,500万円、1年後に2,500万円という返
済条件で承認を得ることができました。

本件のように、売上や利益と比較して大きな資金を借入する場
合は、資金の使い道や金額の根拠、返済の方法や根拠を、必ず
書面に落とし込んで説明することが重要です。