■資金余力がほとんど無い計画を立てて、その計画通りに執行すると、短期間で破たんする可能性が高くなります。

○例)
自己資金数百万円、創業融資600万円~800万円(自己資金を勘案すると、通常はこれが創業融資の限度額です。)、総事業予算約1,000万円の事業体が、この総予算をすべてつぎ込んでデスバレーを越える計画を立案した時、その売上が計画を下回れば途端に経営危機に陥ります。自己資金数百万円、創業融資600万円~800万円、総事業予算約1,000万円の事業体は、数百万円以上の余力を残して立ち上がる計画を立案すべきです。売上の進捗が計画に対して遅れた時に、この余力資金でリカバーすることができます。

○そもそも、創業1期目に、計画通りの売上を作れるケースは稀です。極端に保守的な計画を立てれば別ですが。成功者の大半は「紆余曲折を経て、何とか事業が立ち上がった」と言っています。当初に想定した「仮説」通りに事業は立ち上がらない、この達観が必要です。

◆創業事業計画に対する誤解とは…

第20期目の会社が第21期目の計画を立案した時、その計画はよほどの冒険でもしない限り、  10%も狂わないはずです。第3期目の会社が第4期目の計画を立案した時、その実現の蓋然性には、まだまだ多くの疑問が残っています。創業時に作成する創業1期目の創業事業計画書の精度は?大きな疑問が残ります。当然です。創業事業計画とはそのようなものです。それでも、大きな指針・目安として必要です。この目
安とのかい離を確認しながら事業を進めるために必要です。
創業事業計画書は、絶対に必要ですが、鵜呑みにしてはいけません。

■大きな自己資本を有していない創業者が大きな事業をやりたいなら、二段階、三段階で事業を成長させてください。

○例)
自己資金が数百万円の創業者は、総事業予算1,000万円程度の事業しか立ち上げることができません。まずは、この範囲で事業を軌道に乗せる計画を作って実現してください。第一ステージが軌道に乗った時、次の資金調達を行って第二ステージをクリアしましょう。このステージアップを経て、あるレベルを超えた時、エクイティー資金(社長が望むなら)の調達も視野に入ってきます。飛躍を狙うのはこのステージです。

○小資本しか持ち合わせていないが、大きな資金調達ができれば短期間で成長できる、故に資金調達を行いたい…このような考えは稀有な幸運と実力を持ち合わせたほんの一握りの人たちのみに通用する論理です。一般的ではありません。
※ベンチャーキャピタルは、将来性も当然ですが、一定以上の実績を待ち合わせた事業体に出資します。実績の無い計画書に出資するケースはほぼ無いと考えてください。

◆エクイティー資金(ベンチャーキャピタルからの投資)に関する誤解とは…

ベンチャーキャピタルは…
1.
計画書には原則出資しません。小さな成功実績に出資します。この小さな成功に、大きな資金をつぎ込むことで、時間と規模、競合との差別化を買うための出資です。
※計画書に出資する事例は、あくまでも推測ですが、日本国内で年間数例以下でしょう。
2.
短期間に大きく成長できる蓋然性が出資の条件です。イメージは、最長5年ぐらいで、純利益が数億円以上、この純利益がその後さらに大きく伸び続ける事業に出資します。

■今の力相応に創業しましょう。

大きな野望を捨てる必要はありません。望むのなら、十年後・二十年後に成し遂げればよいのです。
ただし、今は、今の力相応の事業に取り組みましょう。

○自己資金(自分の力や縁で調達できる資金)が数百万円なら、創業融資を最大限行って、総事業予算1,000万円位の事業を立ち上げましょう。まずは、このステージをクリアすることです。

○自己資金(自分の力や縁で調達できる資金)が5千万円準備できるなら、それ相応にスタートすればよいでしょう。

◆今の力に不相応な創業は総じて失敗します。

今、力がないのに大きなことをやりたい、これは間違えです。無いものねだりです。経営者としては失格です。大きなことをやりたいが、今はお金がないので、力相応の小さな成功を積み上げて、最終的には大きなことを成し遂げる、これが正解であるはずです。
大きな、大き過ぎると思われる夢を捨てる必要はありません。ただ、未来の大きな夢と現実を、はっきりと区分けして創業してください。

もし、銀行の担当者から、「融資を引き揚げる。」と言われたら、平常心でいられるでしょうか。残念ながら、相手に知識がないと見れば、このような事を平気で口走る銀行員がいることも事実です。

先日あったA社様の事例です。業績は大変良好ですが、急激に売上が伸びたため資金繰りが苦しくなり、あるメガバンクから10回払いのプロパー融資1,000万円と保証協会の保証付き融資2,000万円を受けました。しかし、それだけでは資金が足りないため、「もっと資金を調達したい。」とのことでご相談に来られました。

進行期の業績が伸びていたため、決算を締めた後の方が大きく資金調達を行えると判断し、ある地銀にアプローチして、決算後に、保証協会とプロパーの合算で、最大限の融資を検討してもらうよう段取りを進めていました。

決算が出てから数日後、A社の社長様より、「メガバンクから6,000万円の保証付き融資の提案を受けた。」との連絡がありました。業績面から見て、それぐらいの保証は出るだろうと考えており、地銀とは、そこからさらにプロパーをどれぐらい積めるかを検討してもらっていましたので、社長様には、メガバンクへの回答は一旦ペンディング、もしくは追加でプロパーを検討してもらえるかを聞いていただくよう依頼しました。

翌日社長様から連絡があり、メガバンクに話したところ、「まずは保証付き融資を借りて欲しい。それからプロパー融資は検討する。また、最初に融資をしたことを評価して欲しいと考えており、当行で借りてもらえないなら、今貸している融資を引き揚げる可能性もある。」と言われたとのことでした。

A社の社長様は、創業以来数年間、自己資金だけで経営をしてこられ、昨年の公庫とメガバンクの借入が初めての借入でした。金融機関対応には慣れていませんので、このようなことを言われれば、当然驚いてしまいます。

このような話は、お客様経由でしばしばお聞きします。本件に限らずですが、延滞もなく契約通り履行している融資を引き揚げられる可能性はありません。本当につまらない脅しですが、金融機関取引に慣れていない社長様であれば従ってしまいます。金融機関取引に慣れた社長様でも、業績が悪化した局面でこのような事を言われれば必ず動揺します。

もちろん、このような銀行員はほんの一握りです。銀行員全員を毛嫌いして、いたずらに敵対意識を持って応対することは得策ではありません。このような銀行員に出会った時の対処方法は、やはり、金融財務の知識を身につけるか、知識を有した相談相手を持ち、知識で対抗するしかありません。

…前回のつづきです。

我々日本人は、生産性の向上と時短・労働力の確保を経営的に解決していかねばなりません。そのためには、生産性の向上を図る、何よりもこれが必要です。

■生産性の向上のために、本来最も必要なことはビジネスモデルの転換・事業立地の変更です。

以前にもご紹介しましたが、「週刊東洋経済、2015年9月12日、特集経営学の教科書」(東洋経済新報社)に寄稿された、「高収益企業の創り方」(東洋経済新報社、三品和広氏〔神戸大学大学院・経営学研究科教授〕)の著者である、三品和広教授の記事を引用して解説いたします。

『…(高収益企業の研究を通じて)成功例に共通している点は一目瞭然だった。「事業立地」がよいということだ。仕事の仕方の工夫や製品開発ではなく、そもそも「何屋さんをやるか」の選び方が優れている。事業立地の考え方では、ある市場の中でどこにポジションするかよりもむしろ、そもそもどの市場を選ぶかが重要になってくる。…』

『…事業の根底には立地(誰に何を売るか)があり、その上に構え(出荷するモノをいかに入手して顧客に届けるか)、製品(いかに個別製品を魅力的に仕立てるか)、管理(いかに品質・原価・納期を守るか)が重層構造を成している。…中期経営計画などで立地や構えに手をつけることなく、製品の刷新や管理の強化を打ち出している企業は数多くあるが、この次元で動きだしたところで、高収益への転換に結び付いた事例はほとんどない。…』

三品教授のおっしゃるように、事業立地を(間違えずに)転換できれば最高でしょう。高収益・高生産性を手にすることができます。ただ、これは容易ではありません。それでも、上記の指摘は、重要な指針として認識しておくべきでしょう。

■ビジネスモデルの転換を図るためのもう一つの指針をご紹介します。
『古代から現代まで2時間で学ぶ・戦略の教科書』(鈴木博毅氏著、ダイヤモンド社)から引用しながら解説いたします。

◆パラダイムの呪縛…
人や企業は、過去の経験に無意識に縛られてしまうようです。
無意識の思い込みは、自分自身にある種の境界やルール(無意識の自主規制)のタガをはめてしまいます。これがパラダイムです。
・飲食業とは…であるべきとの思い込み。
・小売業とは…であるべきとの思い込み。
・建設業とは…であるべきとの思い込み。
・税理士とは…であるべきとの思い込み。
・時計とは …であるべきとの思い込み。

このパラダイムこそ、新しい発想を阻害する大きな要因です。
多くの人々は、このパラダイムの中でのみ事業を営みます。故に突出した成功を収めることができないのではないでしょうか。

◆パラダイム・シフトとは…
『…将来を予見する能力を高めたいと思うなら、トレンドが目にみえて変わってくるまで待ってはいけない。ルールをいじりはじめた人に注意しなければならない。それが、大きな変化の兆候だからである。…』

◆同著のなかでは、こんな事例が紹介されています。
『「六万二千人のうち、五万人が職を失う」1979年から1981年にスイスで時計をつくっていた職人の話です。世界の時計市場を支配していたスイスが、そのリーダーの座を明け渡した瞬間でした。日本に、です。…シンプルで正確なクォーツ時計の普及で、機械式全盛の時代が終わりを告げたのです。…』

◆経営者として取り組むべきは…
『…パーカーが指摘する戦略とは、将来にうまく対処するためパラダイムの柔軟性を常に最大限高めておくことです。誰かがルールを変えて、新たな成功事例が生まれたとき、そこに意を決して飛び込むことができるようにです。…』

あらゆる業界や分野で、パラダイム・シフトが起きています。
または、起きつつあります。
上記の提言を肝に銘じておきましょう。

生産性の向上と時短・労働力の確保、経営者が取組むべき喫緊
の課題です。今こそ待ったなしに大ナタを振るうタイミングか
も知れません。

中小企業における財務の強化方法についてシリーズでお伝えしております。第1回目は、「試算表」を毎月作成することの重要性を、続く第2回目は、「資金繰り表」を作成することの重要性をお伝えしました。3回目となる今回は、「中小企業が実践すべき財務戦略」をお伝えします。

前回までの内容に反するようですが、試算表や資金繰り表を作成すること自体に大した価値はありません。財務に関する明確な指針を持って初めて、試算表や資金繰り表が価値あるものに変わります。そして、当協会では、「手元キャッシュをより多く持つ」ことを、中小企業の財務指針として推奨しています。

手元キャッシュを厚くする主な理由は、「キャッシュが切れない限り、倒産することはない。」、「キャッシュに余裕があれば不測の事態が起きても落ち着いて対処できる。」「キャッシュがあれば千載一遇のビジネスチャンスを逃さない。」ためです。経営の目的を達成するために、キャッシュは絶対に欠かせない要素のひとつです。

しかし、「元々潤沢な自己資金を持っている。」もしくは、「毎月キャッシュが余るほどの大きな利益を上げている。」のでなければ、そう簡単に手元キャッシュを厚くすることはできません。手元キャッシュを増やす最も現実的な方法は、「借入を最大限活用する。」ことです。

借入を嫌う経営者様は多いですが、そこには、困った時には金融機関が融資をしてくれるだろうという錯覚があります。実際は、金融機関はこちらの都合で融資をしてくれません。不測の事態が起きた時、千載一遇のビジネスチャンスに出会った時、都合よく融資を受けられる保証はないのです。中小企業における金融機関とのお付き合いは、自社のタイミングで融資を受けにいくのではなく、金融機関側のタイミングで融資を受けて手元にキャッシュを置いておき、必要な時に使うというのが正解です。

今すぐ必要でない資金を借りた場合、余分な金利を払うというデメリットはありますが、いざという時に融資を受けられないリスクに比べれば小さな問題です。また、借入が増えると財務内容が悪くなると考える方もいらっしゃいますが、借入と同時に預金も増えますので、実質的な借入額は増えません。

「借入を活用してでも手元キャッシュを厚くしておく。」ことの重要性にご賛同いただけたならば、次は、「どうすれば金融機関から最大限の融資を受けられるか。」という課題にお気づきになると思います。金融機関から最大限の融資を受けるために必要なのは、自社の財務状況を定期的に金融機関に開示し、融資が可能であれば、いつでも提案を持ってきてもらえる関係を構築することです。

試算表や資金繰り表は金融機関とコミュニケーションを取る必須アイテムです。まずは、試算表と資金繰り表を毎月しっかりと作成し、さらに、「キャッシュをより多く持つ。」という財務指針も金融機関と共有することで、強固な財務体制を構築することができます。

…前回のつづきです。

我々日本人は、生産性の向上と時短・労働力の確保を経営的に解決していかねばなりません。そのためには、生産性の向上を図る、何よりもこれが必要です。

■前回号でご紹介した仮説を検証してみましょう。
「…日本の企業は顧客の声を聞きすぎる。顧客の過度な要望への対応は、企業を疲弊させ、低生産性の元凶になっている。顧客を神さまと勘違いして、過剰な対応を行うということは、一方で、自社の経営と従業員を疲弊させることになる。顧客に提供するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが、国全体として崩れてしまっていることが、日本の生産性を著しく低くしてしまった。…」

◆「顧客はだれか?」顧客の定義・選別が重要です。
顧客をないがしろにしても良いとの意味ではありません。お客様第一、この発想こそビジネスの礎です。問題なのは、顧客の定義が曖昧なことです。全員が顧客だ、との間違えた思い込みです。

〔わかり易いので飲食店の例で…〕
○高級なフレンチレストランではミネラルウォーターも高価です。「水がなぜこんなに高い?」との疑問を呈する人は顧客ではありません。ただし、この高価なミネラルウォーターは、立派なグラスで丁寧に提供されなければなりません。
○一方、大衆店で、おいしい水を立派なグラスで提供してもらおうと考える人も、この大衆店の顧客ではありません。

◆顧客を定義するためには、提供するサービスを明確に定義する必要があります。

〔わかり易いので飲食店の例で…〕
○当社は高級なフレンチレストランを経営するので料金は高い、お水はミネラルウォーターを立派なグラスで(有料で)提供する。ミネラルウォーターが高いという人は当社の顧客ではない。
○当社は大衆店を経営するので価格はリーズナブル、その分顧客の細かい要望にはお応えできない。

上記を明確にしないまま、お客様第一主義を突き詰めると、そのツケはすべて自社に、自社の従業員に跳ね返ってきます。

◆営業時間の問題も、個別対応の問題も同じです。
顧客が望むから(推測も含めて)営業時間を延長する、顧客が要望するから(推測も含めて)個別対応を行う…これらを収益上の検証も行わず、その多くを顧客満足度の向上との安直な発想で取り入れ続けた結果が、生産性の低下を招いています。

◆もはや精神論と根性論だけでは解決できません。
成熟著しい日本の市場においては、すべての事業体が、自社が定義した顧客(のみ)に対して、自社が定義したサービスや商品(のみ)を、生産性の整合性を担保した上で提供していく方針に舵を切らねばならないようです。
1.自社の顧客に対してのみ顧客第一主義を貫く。
2.自社が定義したサービスや商品のみを提供する。
さらに、これらの収益上の整合性を確保することも必要です。

■『時短と生産性の向上』のためには…
1.顧客の選別(絞り込み・単純化)
2.商品・サービスの明確化(絞り込み・単純化)
3.価格の改定(値上げ)
4.営業時間の見直し(短縮)
今の日本は、好むか好まない、できるかできないではなく、これらの選択肢を排除できない、切羽詰まった岐路に立たされているように思います。

繰り返しますが…
「…日本の企業は顧客の声を聞きすぎる。顧客の過度な要望への対応は、企業を疲弊させ、低生産性の元凶になっている。顧客を神さまと勘違いして、過剰な対応を行うということは、一方で、自社の経営と従業員を疲弊させることになる。顧客に提供するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが、国全体として崩れてしまっていることが、日本の生産性を著しく低くしてしまった。…」

この機会にご一考いただければ幸いです。

前回のメールマガジンでは、財務管理の強化は試算表の作成から始まることをお伝えしました。しかし、試算表だけ作成すれば十分かと問われると、そうではありません。試算表にはキャッシュベースの収支が分からないというウィークポイントがあります。

赤字になっても即倒産はしませんが、資金が底をつくと黒字でも倒産します。そういう意味では、利益管理よりも資金繰り管理の方が重要です。そして、資金繰りの管理を行うツールが「資金繰り表」になります。資金繰り表は、毎月の入金額と支出額を項目ごとにまとめた単純な表ですが、財務管理にとても役立ちます。

殆どの社長様が何らかの資金繰り表を作成していると思います。実際に表を作成していなくても、頭の中にはおおよその入金額と支出額が入っているはずです。ただ、残念なことに、今月、もしくは来月、といった短い期間の資金繰り状況しか把握できていない方が大多数です。

短期間の資金繰り計画しか立てていないと、「お金が足りない!」という事態が直前に迫るまで分かりません。資金調達は、短期間で行おうとすると余計に難しくなりますので、経営者としての他の大切な業務を削ってでも資金調達に走り回らなくてはならなくなります。行き当たりばったりの財務活動です。

計画的に財務活動を行うために実践していただきたいのは、向こう1年間の「資金繰り計画」の作成です。1年程度先までの資金繰り計画を立て、資金の流れを予測しながら、資金調達や設備投資の計画を立てます。1年先の売上など分からないという声もあるかもしれませんが、向こう1年間の「資金繰り計画」とあわせて、過去1年間の「資金繰り実績」も作成してみてください。過去の売上の動きから、未来の売上の動きが何となく予測できます。

財務管理の最大の目的は、「資金を切らさないこと」です。試算表で利益を管理しながら、自社の資金調達力を高め、資金繰り計画を立てて計画的に資金調達や設備投資を行えば、資金に慌てることなく落ち着いて経営に専念できます。

好む好まざるに関わらず、時流・トレンドは短時間労働に傾注しています。具体的には年間労働時間1,800時間(正社員)あたりに納まっていくはずです。
一方、日本は先進国の中でも生産性の低い国に甘んじています。
「2015年度の時間当たり労働生産性は、OECD35カ国中20位で42.1ドルです。米国68.3ドル、ドイツ65.5ドル、イタリア51.9ドル…」〔公益財団法人日本生産性本部労働生産性の国際比較2016年度版から引用〕

我々日本人は、生産性の向上と時短・労働力の確保、これらの課題を経営的に解決していかねばなりません。そのためには、生産性の向上を図る、何よりもこれが必要です。

■生産性の向上策を検証してみましょう。

1.業務のスピードを上げる、効果は△です。
同じことを10%早くやれば、確かに生産性は10%向上します。まじめな人ほどこのテーマに邁進します。確かに重要ですが、精神論・根性論に終焉しがちです。他にも方法はあります。

2.業務を減らす、効果は○です。
仕事を棚卸してください。思い切って業務を20%止めましょう。業務を減らせば仕事は減ります。業務を減らすためには、業務そのものを棚卸するだけでなく、過剰な品質になっていないかどうか、業務内容も検討してください。業務が過剰品質になっているケースも少なくありません。
※やめることを探してください。上手にやろうとするのではなく、思い切ってやめる、この決断が必要です。

3.その他、あらゆるものを減らす、効果は○です。
提供するサービスや商品、不採算顧客等、あらゆるものを棚卸する必要があります。聖域を設けずにあらゆるものを対象にして、選別して減らすことを考えてみましょう。
※不要なモノがたくさん混在しています。悪の根源はこれらの不要なモノです。

4.値上げする、効果は○です。
単価を5%上げることができれば、生産性は5%向上します。一律の値上げは乱暴ですが、不採算商品や不採算顧客に対する値上げは有効です。減収の覚悟も必要ですが、案外値上げが通ることもあります。重い判断になりますが、選択肢として排除すべきではありません。

5.過度なサービスを止める、効果は○です。
メニュー表にない+αのサービスを、しかも無償で担当者が提供し続けているケースは少なくありません。これも棚卸して顕在化させてください。サービスの必要性を担当者個人の裁量に委ねるのではなく、経営として判断してください。必要なら正式に行う、不要なら会社としてやめる…判断してください。
※無償サービスを会社として容認し続けるロスは、担当者個人の負担として、その担当者を直撃します。退職につながるケースが多いです。

6.生産性を管理する、効果は○です。
部門ごと、出来れば担当者ごとに、その生産性を把握できる指標を設けて管理してください。部門、出来れば担当者ごとの実績を把握し、目標を決めて、継続的に管理することは大変有効です。
※担当者個人を責めるための管理ではありません。生産性を改善させるため・個人の負担を軽減させるための管理です。

7.ビジネスモデルを転換する、効果は◎です。
容易ではありませんが、より単純(Simple)で高収益(Profitable)なビジネスモデルに転換できれば、その生産性は格段に向上します。
これこそ社長の仕事です。惜しみない勉強が必要です。

■『効率を上げろ』この声は精神論・根性論に終焉しがちです。
そうではなく、まずは『やめること・減らすこと』『価格を見直すこと』を主眼に置いた生産性向上策に、経営として取り組んでください。

◎諸説あります。一部の学者の声ですが…
「…日本の企業は顧客の声を聞きすぎる。顧客の過度な要望への対応は、企業を疲弊させ、低生産性の元凶になっている。顧客を神さまと勘違いして、過剰な対応を行うということは、一方で、自社の経営と社員を疲弊させることになる。顧客に提供するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが、国全体として崩れてしまっていることが、日本の生産性を著しく低くしてしまった。…」
経営者として考えさせられる内容ですね。この機会にご一考ください。

殆どの中小企業が財務管理に改善の余地があると感じます。財務管理が弱いと、自社の財務状況を金融機関に正確かつタイムリーに伝えられないため、本来融資を受けられる業績であっても、融資を断られる場合があります。融資をスムーズに受けられなければ、成長の機会を逃す、資金が詰まる、という危機に陥りますので、財務管理は強い方が安心です。

財務管理強化の第一歩はどんぶり勘定から脱却することです。通帳の残高を見ながら感覚的に経営するのではなく、財務数値に基づいて経営判断を下した方が、より正確な経営判断を下すことができます。

正確な財務数値を把握するには、月次試算表が必要です。試算表を見れば、キャッシュの動きだけでは分からない「利益」と「資産・負債」の状況が分かります。

どんぶり勘定が引き起こす問題の代表的な事例をご紹介します。

■ 実は赤字だが資金繰りが回っているため気付かない。
本当は赤字に気付いているのかもしれませんが、赤字を直視しないことによって対策が遅れます。赤字を改善する努力よりも、借入で資金繰りをごまかすことを優先し続けると、必ず最後に資金が行き詰ります。

■ 無駄な資金繰りに時間を費やしている。
取引条件によっては黒字でも資金繰りが苦しくなります。黒字ですので融資を容易に受けることができ、資金繰りの苦労からも簡単に解放されますが、それに気付かず資金繰りに多大な労力をかけています。

■ 融資を受けられるタイミングを逃している。
6か月前なら融資を受けられたというケースです。本当に良くお見受けします。融資はいつでも受けられる訳ではありませんので、財務状況をタイムリーに管理し、一番借りやすい時に借りておくのが鉄則です。資金が必要なのに融資を断られて困っている企業様の半数は、過去に資金調達のタイミングを逃しています。

他にもたくさん事例はございますが、お伝えしたいのは、「試算表」を毎月作成することの重要性です。あらゆる財務的な判断は試算表を基に行われます。財務強化の第一歩として、試算表を毎月作成できているかどうかをご確認ください。

以下は、昨年の11月17日から18日にかけて渋谷ヒカリエで開催されたTechCrunch Tokyo 2016のレポート記事より引用させていただきました。「 」内は引用です。

「…そもそもスタートアップに投資するお金、つまりベンチャーキャピタルファンドに流れるお金はどのように推移しているのか。最近ではスタートアップの大型調達のリリースを耳にする機会も増えているので、ベンチャーキャピタルの資金も増えているはずだ。1年間のベンチャーキャピタルファンドの組成額は、ここ数年2000億円付近を推移している。ピークと言われる2006年は3500億円に達していたが、その後2008年のリーマンショックから続く金融危機の影響を受け、2009年、2010年は250~300億円と10分の1まで落ち込んだ。そのような時期を経て、やっと回復してきているという。村田祐介氏(インキュベイトファンド代表パートナー)の調べによると、2016年上半期の組成額はすでに2500~2600億円程で、今年度は3500億円に達するのではと予想する。…」

ベンチャー企業向けの投資用のファンドがどんどん組成されています。ベンチャーキャピタルの投資が活発です。投資する際の企業価値評価も、総じてポジティブ、一部は株価が高騰していると言われています。

事業を積極的に仕掛けて、飛躍させたいと考えておられる社長様は、エクイティーによる資金調達にも挑戦してください。

※銀行借り入れなどによる調達をデッドと呼びます。これは借入れです。元金に金利を乗せて返済します。一方、エクイティーとは、自社の株式を新たに発行、買い取ってもらうことで資金を調達します。返済義務はありませんが、投資家は株主として議決権を行使します。
デッドとエクイティーの中間的な転換社債や、議決権を抑えて、配当を優先する、または、近未来の業績に応じて株価が変動する…様々な種類株もあります。会社側と投資家の利害を調整する手法も進化してきました。

■エクイティー資金の投資を受けられる会社様の条件を整理します。

◆1:事業性
○会社を成長させて事業を世に問う、近未来に株式公開などを目指すことが条件になります。一定以上の社会性を有することも条件です。

◆2:経営者の考え方
○資本を他人から受けて、言いかえると、第三者を株主に迎え入れて経営ができることが条件になります。経営が変わります。
この決意が必要です。

◆3:将来の収益性
○5年~7年以内に株式公開基準をクリアーできる事業性が必要です。例外を除いて、5~7年以内に数億円程度の純利益を継続的かつ、増益基調で計上できる収益性が必要になります。

◆4:足元の実績または、経営者の実績・経歴
○一定の事業実績が必要になります。
・5年後に売上高20億円、営業利益4億円を計画、実績は、前々期の売上高が1億円で営業利益が▲1,000万円、前期の売上高が2億円で営業利益が2,000万円、今期は半期で売上高が2億円、営業利益2,000万円、これならわかり易いですね。
・収益が伴っていなくても、例えば会員組織を作って将来利益を見込める蓋然性が高い、この場合などでは、その会員数の推移が実績になります。確実に組織が構築されていて、将来的に利益を計上できる合理性があればポジティブです。

○実績が少なければ、経営者の経歴と事業性を評価します。
すごい人が、その経験に沿ったすごいことをやる、これに近いほど投資評価はポジティブになります。業績の裏付けがなければ、経営者の経歴と事業性が重要になります。ただ、事業実績無しの立ち上げ時に投資を受けるのは難解です。ほぼ無理です。

※エクイティー資金の調達は、金融機関借入に比して容易ではありません。

■投資家へのアクションは…
投資家側も事業を探しています。投資に値する事業を見つけるのに躍起です。

◆1:説明資料を準備してください。
・経営者の経歴・経験、今の事業に至った経緯・理由
・事業の有望性と自社が取り組める理由
・中期計画概要、短期的な攻めどころと資金需要(何にお金が必要か?)
・足元の業績

◆2:投資家を探してください。
・ベンチャーキャピタルの所在を探すことは容易です。ホームページで検索すれば出てきます。直接電話をして話せば対応してくれます。投資家側も事業を探しています。
・ご縁があれば紹介を受けてください。ポイントは、エクイティーに縁深い一社・一人を見つけることです。エクイティーの世界は、横のつながりが深く、一社・一人が多くの仲間を紹介してくれます。

■投資を受ける際には、よく理解してください。

◆1:投資家も納得する事業計画が必要です。

◆2:それに沿った資本政策が必要です。あわせて株価も決まります。

これらは、投資家と協議をしながら決めることになります。注意すべきは、名のあるベンチャーキャピタルは総じて紳士ではありますが、それでも株価は安い方が良い、一方、会社側は株価を高くしたい、この利害が存在します。
また、企業価値=純資産+将来利益、この将来利益に会計上の正解は存在せず、売り手と買い手の目論見で決まります。会社側も専門家の助言を受けた方がよいでしょう。

エクイティーに対する知見は、多岐にわたる複雑な内容です。
すべてを理解することは容易ではありませんが、要点だけでも留め置きください。

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

1991年のバブル崩壊を機に、金融機関にも暗黒の時代が訪れました。不良債権問題が顕在化し、新規貸出目標がマイナス、すなわち回収目標が課せられるような異常な時代が続きました。

この異常な状況を収めるために、金融庁が制定したのが「金融庁マニュアル」です。金融庁マニュアルは、銀行の不良債権を炙り出して処理を迫ることに一定の成果を上げました。

そしてあれから20年、不良債権処理も終わり、銀行は以前のように高い収益を上げられるようになりました。金融庁マニュアルもその役目を終えたといえます。

このような状況下、金融庁も方針をこれまでと大きく転換させようとしています。金融庁マニュアルの廃止です。

金融庁マニュアルは、不良債権処理に役立った一方で、銀行の審査を形骸化させる要因にもなってしまいました。過去の財務数値をマニュアルに当てはめるだけの機械的な作業は、社長や社員の人間性、お客様や取引先からの評判、事業の新規性など、財務数値に表れない企業の価値から将来の返済能力を推し量る力を銀行から失わせました。

金融庁は、地銀・信金等の地域金融機関に対して、地元回帰、事業性評価を取り入れた新しい審査の枠組みを提示し始めています。もちろん、金融機関側の反発もあると思いますので、すぐに現場レベルで運用がスタートするとは考えにくいのですが、間違いなく今年はその方向に前進すると感じます。

では、金融新時代に適合するために企業側はどのような準備をしておくべきでしょうか。私はビジネスモデルの整理だと考えています。これからは財務面だけでなく、非財務面も見られるようになります。

「貴社が、他社との競争に勝ち、5年後、10年後に生き残っていると考える理由は何ですか?」

この質問に胸を張って答えられるようになることを、今年の目標のひとつにしてはいかがでしょうか。