殆どの中小企業が財務管理に改善の余地があると感じます。財
務管理が弱いと、自社の財務状況を金融機関に正確かつタイム
リーに伝えられないため、本来融資を受けられる業績であって
も、融資を断られる場合があります。融資をスムーズに受けら
れなければ、成長の機会を逃したり、資金が詰まるという危機
に瀕したりしますので、財務管理は強い方が安心です。

財務管理強化の第一歩はどんぶり勘定から脱却することです。
通帳の残高を見ながら感覚的に経営するのではなく、財務数値
に基づいて経営判断を下した方が、より正確な経営判断を下す
ことができます。正確な財務数値を把握するために、まずは月
次試算表の作成から始めましょう。試算表を見れば、キャッシ
ュの動きだけでは分からない「利益」と「資産・負債」の状況
が分かります。

どんぶり勘定が引き起こす代表的な事例は以下となります。

■ 実は赤字だが資金繰りが回っているため気づかない。
本当は赤字に気づいているのかもしれませんが、赤字を直視し
ないことによって対策が遅れます。赤字を改善する努力よりも、
借入で資金繰りをごまかすことを優先し続けると、必ず最後に
資金が行き詰ります。

■ 無駄な資金繰りに時間を費やしている。
取引条件によっては黒字でも資金繰りが苦しくなります。黒字
ですので融資を容易に受けることができ、資金繰りの苦労から
も簡単に解放されますが、それに気づかず資金繰りに多大な労
力をかけています。

■ 融資を受けられるタイミングを逃している。
本当によくあるケースですが、6か月前なら融資を受けられた
というケースです。融資はいつでも受けられる訳でありません
ので、財務状況をタイムリーに管理し、一番借りやすい時に借
りておくのが鉄則です。資金が必要なのに融資を断られて困っ
ている企業様の半数は、過去に資金調達のタイミングを逃して
います。

他にもたくさん事例はございますが、お伝えしたいのは、「試
算表」を毎月作成することの重要性です。試算表は、あらゆる
財務的な判断を下す根拠となるものですので、財務管理を強化
するための第一歩として、試算表を毎月作成することからスタ
ートしてください。

新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

大変不透明な時代が続きます。首都圏を中心に緩やかな成長が
持続しているようですが、経済や外交などを正確に予測できる
人はいません。それだけ世の中が複雑で難解な時代になってし
まったのでしょうか。一方、それらの動きに一喜一憂するより
も、自社の経営について、しっかりと考え続けましょう。
本年も、皆さま方のお役に立てそうな情報を配信させていただ
きます。少しでも、貴社の経営に役立てれば幸いです。

年初に当たって、もう一度、経営の基本指針について言及させ
ていただきます。一つの考え方としてご確認ください。

■単純(Simple)な経営を目指してください。
…分散してはいけません。複雑にしてはいけません。絞り込ん
で単純に仕上げてください。

ビジネスモデルはできるだけ単純にしましょう。事業体の仕組
み自体も単純になります。集中できて強くなります。業務が効
率的になり、ミスも減ります。高品質のサービス・商品を生み
出し、高い収益力を持つことができます。
分散と複雑化は、経営における諸悪の根源です。

■高収益(Profitable)な企業作りを目指してください。
…安売りは絶対にNGです。経営の難易度を著しく高め、かつ、
創造力を奪います。

売れた時には、大きな利益を出せる収益構造を当初から設計し
ましょう。高めの粗利益率の設定、高めの値付けを心掛けてく
ださい。値決めを外すなら高めに外してください。ビジネスと
して完成した時点での営業利益率は20%以上で設計してくださ
い。
安売り戦略は、経営の難易度を高め、事業体の創造力を奪い去
る原因になります。

■手持ち資金を潤沢(Ample)に維持してください。
…資金余力は企業経営の余裕代、時間を提供してくれます。財
務機能を持ってください。

資金は可能な限り潤沢に持ち続けましょう。借入れの金利負担
よりも、資金に困るリスクの方がはるかに深刻であることを認
識してください。また、借入れのタイミングは、自社が資金を
必要とするタイミング(借り手の都合)ではなく、金融機関が
融資できるタイミング(貸し手の論理)に沿うことが重要です。
総じて貸し手の方が強いからです。
資金余力がもたらす経営者の心の余裕と、増加分の金利負担を、
天秤にかけて比較してください。

■変化に対応できる柔軟性(Flexible)のある企業体を維持し
てください。
…計画のずれを想定した経営を行ってください。

計画(売上の達成)が遅れることを想定しながら経営してくだ
さい。「コントロールできない売上を、コントロールできる売
上以外の経費の執行で調整する」、これが経営管理です。経費
の執行をワンテンポ遅らせる…これが不透明な時代に、企業体
力が十分でない事業体が選択すべき経営のコツです。また、遅
れを許容するための資金余力を持てる財務戦略が重要です。

■経営判断を明確(Clearly)にしてください。
…感覚に頼らず、数字を基準にした論理的な経営を行ってくだ
さい。

曖昧な経営判断、お人好しな対応を止めましょう。
経営は、感覚や概念ではなく、数字で管理してください。感覚
や概念を基準に考えると、判断が曖昧になりがちです。数字を
基準にした判断は、その判断の精度を各段に向上させます。
経営が締まります。

経営の判断基準は何か?永遠のテーマです。
経営の判断基準は無限にあります。逆にも真あり、敢えて真逆
を攻めることで成功することもあります。
それでも、王道をお薦めいたします。王道とは、多くの偉人が
語り続けた経営の道です。
上記の方針は、偉人が語る経営の道に近似しているはずです。
当然です、偉人の言葉を借りているからです。
経営者の皆さま方が、理詰めで考えて、腑に落ちた部分につい
ては、今後の指針として、深く、深く…心に刻んでください。

本年度の、皆さま方の更なるご発展とご健勝を心より祈念いた
します。
感謝・合掌