前回のコラムでは、資金繰りが悪化する根本原因と、早期発見
のためのチェックリストをお伝えしました。今回は、具体的な
改善策として、比較的すぐに効果が期待できる「売掛金管理の
徹底」と「在庫のスリム化」について解説します。
1.売掛金管理の徹底:
入金サイクルを早め、確実なキャッシュフローを確保
売掛金は、将来入金される予定のお金とはいえ、回収が遅れれ
ば遅れるほど、手元の資金繰りを圧迫します。以下の対策を講
じることで、入金サイクルを早め、安定したキャッシュフロー
の確保に繋がります。
・取引先の信用調査の徹底
回収不能が発生すると資金繰りに大きな影響が出ます。新規取
引先はもちろん、既存の取引先についても定期的に信用状況を
確認しましょう。必要に応じて与信限度額を設定することも有
効です。
・請求書の発行サイクルの見直し
請求書は、商品やサービスを提供したら速やかに発行すること
が鉄則です。月末締め翌月末払いといった慣習にとらわれず、
早期の発行を検討しましょう。電子請求書の導入も効率化に繋
がります。
・入金状況の定期的な確認と迅速な対応
入金予定日を過ぎても入金がない場合は、速やかに取引先に連
絡を取り、状況を確認しましょう。放置すればするほど、回収
が困難になる可能性があります。
・回収条件の見直し
必要に応じて、前金払いや手付金の導入、支払サイトの短縮な
どを検討しましょう。取引先との交渉は重要ですが、自社の資
金繰りを守るための毅然とした姿勢も必要です。
・ファクタリングの活用
売掛金を早期に現金化する手段として、ファクタリングを検討
するのも一つの方法です。手数料はかかりますが、急な資金需
要に対応できるメリットがあります。
2.在庫のスリム化:
不要な在庫を減らし、キャッシュを有効活用する
過剰な在庫は、保管コストだけでなく、陳腐化のリスクも伴い
ます。以下の対策を通じて、在庫のスリム化を図り、キャッシュ
を有効活用しましょう。
・定期的な棚卸の実施と不良在庫の処分
定期的に棚卸を行い、長期滞留している不良在庫を把握し、思
い切って処分しましょう。不良在庫は、会社の利益を圧迫する
だけでなく、保管スペースも無駄にします。
・発注ルールの見直し
過去の販売実績や今後の需要予測に基づき、適切な発注量を決
定しましょう。安易なまとめ買いは、過剰在庫の原因となりま
す。
・先入れ先出しの徹底
古い在庫から順に出庫する「先入れ先出し」を徹底することで、
陳腐化のリスクを低減できます。
・サプライチェーンの見直し
納入リードタイムの短縮や、サプライヤーとの連携強化により、
必要な時に必要なだけ納品される仕組みを構築することも有効
です。
・ITツールを活用した在庫管理の効率化
在庫管理システムを導入することで、在庫状況をリアルタイム
に把握し、発注ミスや過剰在庫を防ぐことができます。
3.事例紹介:
ある製造業のA社では、請求書の発行を月末締めから週締めに
変更し、入金状況を毎日確認する体制を整えた結果、売掛金の
回収期間を2週間短縮することに成功しました。月商1,000万
円ですので、約300万円のキャッシュを生み出したことになり
ます。また、定期的な棚卸と不良在庫の処分を徹底したB社で
は、在庫量を30%削減し、保管コストと仕入代金の支払額を
大幅に削減することができました。
売掛金管理と在庫管理の見直しは、すぐに効果が現れやすい資
金繰り改善策です。今日からできることを実践し、キャッシュ
フローの改善に繋げていきましょう。