銀行融資プランナー協会が推奨する中小零細規模企業の財務方針に、

「銀行融資は借りられる時に借りられるだけ借りておく」というものがあります。

この方針について、関与先様から「借入が増えると銀行からの評価が下がるのでは?」という

ご質問を度々頂戴します。

本質問について、関与先様の実例に沿って解説致します。

 

■ A社の事例

業歴6期の卸売業を営むA社の事例です。年商4億円、経常利益5百万円、

借入残高4千万円の時に関与を開始しました。

売掛期間、在庫期間が長く、運転資金の確保に苦慮していましたので、

弊所が関与して4千万円の資金調達を行いました。

当然ながら決算時には、前期の決算に比べて借入額が倍増しています。

また、業績も僅かながら減収減益となっていました。

しかし、そのような決算書を銀行に提出したにも関わらず、

すぐに複数行から新たな融資の提案をもらいました。

 

このような事例はA社だけでなく、多くの関与先様で日常的に起きています。

このことから、借入の増加が、その後の資金調達に直接的な悪影響を及ぼさないことが

分かります。但し、次の点もあわせてお伝えしなくてはなりません。

 

A社の借入増加が資金調達に悪い影響を及ぼさなかった理由は、

まず、増加した借入金の使途が収益弁済を必要としない運転資金であったこと、

次に、借入の大部分が預金に滞留していたことにあります。

さらに付け加えるならば、今期の増収を見込む事業プランを示して、

増加運転資金のニーズもお伝えしていたことです。

「借入が増えたら銀行の評価が下がる」というのは、一瞬説得力があるようにも感じますが、

借入の中身や使い道の議論を取っ払った非常に雑な考え方です。

 

もちろん、財務内容によって各企業の借入可能額は決まっていますので、

際限なく借入ができる訳ではありません。

A社の調達余力も、借入の増加に伴って小さくなっていきます。

但し、これは銀行からの評価が下がったのではなく、実力相応、

最大限の調達ができていると考える方が健全です。

 

銀行対応については、正確な情報が少ないがゆえに、誤った情報や、

浅い議論に基づいて銀行対応を実践しているケースを散見します。

間違った銀行対応は、貴社の成長の芽を摘むだけでなく、

取り返しのつかない結果を招く危険性もあります。

銀行対応にまつわる話は、感覚的に受け入れるのではなく、

実証的な話かどうかを判断基準にしてはいかがでしょうか。

 

銀行融資プランナー協会が推奨する、

「銀行融資は借りられる時に借りられるだけ借りておく」という財務戦略は、

多くの中小零細規模企業様にとって、有益であることが実証されている財務戦略です。

銀行の評価を下げるどころか、追加融資の提案を受けやすくなっているのが実情です。

ご安心ください。

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